子どもの障害を受け入れられない親がいる。障害に気づかない親もいる。「何でそんなこともできないの」。繰り返し手を上げてしまう。「病気や経済的な理由で、余裕がない場合もある。それぞれに抱えるものがあり、学園に来ている」と副園長の鈴木まや。
子どもも、複雑な思いを抱えている。ある長期休暇で、小学生の啓太が一時帰宅の直前に泣いて嫌がった。理由を聞いても、「おなかが痛い」とだけ。
数カ月して啓太が打ち明けた。「家に帰っても、うまくできない。お母さんを怒らせて、がっかりさせたくない」
職員はどうか。ベテランの大庭英樹は「職員も人間。心にダメージを受けることがある」と話す。特性は子どもによってさまざま。攻撃的だったり、ためて爆発したり、引きこもったり…。思いが強いからこそ職員は感情的になり、傷つく。では、どうすればいいか。大庭は「その子を理解するしかない」という。
発達障害のある淳也はかつて、嫌なことがあると口をきかずに1週間も部屋にこもった。当初、大庭は「部屋から出すことが仕事」と思い、何度もぶつかった。淳也の特性を理解せず、怒りをコントロールできていなかった。
淳也自身、障害を受容できていなかった。大庭は何年もかけ、淳也が苦手なことや他の人と違う部分を伝えた。「あなたの特性は、クソまじめ。それは、いいところであり、悪いところでもある」。そして毎回こう言った。「私は、あなたのまじめさに絶大な信頼を置いてます」
大切なのは「予測すること」。子どもが次にどんな行動に出るのか。理由や背景は何か。予測ができれば、感情を制御できる。大庭は言う。「障害はなくならない。けれど、子どもは成長する」
(敬称略、子どもは仮名)
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