営業職で働くAさん(32歳)は人事評価を聞かされて愕然としました。今期、個人目標の120%を達成したため、高く評価されると思っていたのです。しかし、実際の評価は標準的なもので、昇給額は月額にしてわずか数千円程度でした。
一方で同僚のBさんは、Aさんほどの成果をあげていなかったにも関わらず、高く評価され、来期からの係長昇進が決まりました。この会社は自分の努力を何も見ていないと結論づけたAさんは、その日の夜、勢いで転職サイトに登録したのです。
週末に、友人にこの話をしたところ、「今のまま転職しても、また『なんで俺だけ』ってなるんじゃないか」と指摘されてしまいます。自分は「不当な評価」を受けている被害者なのか、それとも「自分の実力(市場価値)」を勘違いしているだけなのかわからなくなってしまいました。
会社からの評価に不満を募らせ、転職へと踏み切っても良いものなのでしょうか。キャリアカウンセラーの七野綾音さんに話を聞きました。
■評価への違和感は正当な理由だが…
ー「評価に納得できない」という理由での転職は、採用面接でどのように受け取られますか?
評価への違和感は、キャリアを見直す正当な出発点です。転職相談の現場でも頻繁に見られる理由であり、それ自体はネガティブではありません。
しかし面接などで「頑張ったのに評価されなかった」という感情論だけを伝えると、状況を客観視するのが難しい人なのではないかと受け取られ、本来の強みが伝わりにくくなる可能性があります。
大切なのは、不満を抱いた後の行動です。評価の根拠を上司に確認したか、自分の認識と会社の評価基準のズレを埋めるためにどう動いたか。こうした事実ベースのプロセスが問われます。
ー本当に不当な評価なのか、客観的に判断するにはどうしたらいいですか?
まずは評価者である上司と直接対話してみましょう。会社全体の中で自身に求められていることは何なのか、具体的な評価基準を聞き出してください。その上で、自身の努力の方向性が間違っていなかったかを確認します。
例えば、本人は個人の売上が正義だと思っていても、会社側はチームへのノウハウ共有や後輩育成を評価ウェイトの重要項目に置いている場合があります。
評価基準について明確な説明があり、それに沿って行動を修正した結果、評価が改善されるのであれば、それは客観的にも正当な評価と言えるでしょう。
一方、基準が示されないまま、努力の方向性を変えても評価されない場合、それは個人の能力というより、評価軸や価値観のミスマッチと考えるのが自然です。その環境では納得のいく評価を得ること自体が難しい可能性があります。
ー不当な評価を受けている場合、それをバネにキャリアアップ転職を成功させるための戦略はあるのでしょうか?
評価基準についてのすり合わせを行い、それを満たすような働きをしているのに評価されない。その場合、今の環境では自分の価値が発揮できていないサインと考えられます。頑張りを評価されないと、怒りや悲しみという感情が湧き上がってくるものです。そのエネルギーを転職活動での自己プレゼンに変換しましょう。
評価への不満は、裏を返せば自分にはもっと高い価値があるはずだという自信の表れでもあります。ならば、それを証明するための準備が必要です。
「どのような課題に対し、どのような工夫をして、どんな成果を出せるのか。だからこそ御社にこのような利益をもたらすことができ、市場水準に見合う年収の価値がある。」と言語化し、自分の価値を、採用側が判断できる材料として提示する意識で臨みましょう。
ここまで準備すれば、面接でも「やるべきことはやったが、会社の方向性と合わなかった」と堂々と伝えられます。そうした転職であれば、単なる不満からの逃避ではなく、確かなキャリアアップとして受け取られるでしょう。
◆七野綾音(しちの・あやね)キャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント やりがいを実感しながら自分らしく働く大人を増やして、「大人って楽しそう!働くのって面白そう!」と子ども達が思える社会を目指すキャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)

























