内閣不信任案の提出など与野党対立が深まる中、十八日に閉幕した通常国会。新進党が提案した「ボランティア基本法案」は、審議未了のまま廃案になった。
参院委員会で趣旨説明は行われたが、審議には入らないまま。法案づくりの中心となった広中和歌子参院議員は「与党も賛成できる内容だったと思う。野党に手柄を立てせたくないという政治的駆け引きで通らなかった」と残念がった。
法案は、国や自治体がボランティア活動の基盤整備に努めるとし、ボランティア団体の法人格取得や税制上の優遇措置、保険の助成などは「必要な措置を講ずる」との表現にとどめた。各論は具体的に示さなかった。
与党議員は「新進党案は理念だけで、具体性に欠ける。実効が大事だ」と批判。連立与党のNPO(非営利組織)プロジェクトチームはこの二十八日、市民活動団体支援の法案に関する意見をまとめたが、ともあれ法案成立は次の臨時国会以降に持ち越された。
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被災地のボランティアは延べ百二十三万人に上り、今も一日平均約八百人が活動を続ける。「ボランティア元年」の言葉も生まれた。
政府も支援策の検討を始めている。震災から間もない二月三日、五十嵐広三官房長官の指示で関係省庁連絡会議が設置された。以降、会議は四回開かれ、学識経験者やボランティア団体などのヒアリングは十一回になる。
「これまでは各省庁がそれぞれにボランティアの問題を考えていた。縦割りでない支援システムづくりが必要だ」。事務局を務める経済企画庁国民生活政策課の吉岡伸彦・余暇・生活文化室長は、従来の枠にとらわれない取り組みを強調した。
だが、連絡会議の参加は実に十八省庁に上る。厚生、文部、大蔵省はもちろん、郵政省は国際ボランティア貯金、運輸省は観光ボランティア、建設省は河川清掃や公園管理…と、どんどん膨らんだ。
懸案の一つは、税の優遇措置など支援の前提になる法人格の問題だ。
公益法人の制度は既にあるが、行政補完型の団体が中心で、震災現場で活躍した草の根団体の多くは認知されていない。法人認知には、億単位の基金が必要で、監督官庁の行政指導が行われる。
「簡単に法人として認めることになれば、暴力団がボランティア活動をした場合はどうなるのか」「オウム真理教のように悪用される恐れもあるのではないか」。連絡会議では、こんな議論も出されたという。
当初、結論を出すのは夏がめどとされていたが、まだ議論の方向は定まっていない。各省庁は、来年度予算概算要求の作業に入っており、それぞれにボランティア支援策を検討、その個別施策が固まらなければ、会議の論議が進まないのだという。
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「まず国の考え方が前向きになることだ。震災を機に、市民参加の意欲が盛り上がった。次期国会では超党派で法案を通したい」と、広中議員。連立与党プロジェクトチームの高見裕一議員は「官僚はボランティアを行政の補完機能としか考えない。こんな問題こそ議員立法が必要だ」と話す。
ボランティアの芽を育てようという各省庁の取り組み、与野党それぞれの取り組み。夏の参院選の後、秋には総選挙も取り沙汰(ざた)される。支援の具体的道筋は、まだ見えていない。
1995/6/30