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(2)住宅建設の壁 厳しい用地費の手当て
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 「土地を早く、安く買い上げなければならない。胃かいようになりそうだ」

 神戸市住宅局用地課の職員はせわしげだった。市役所二号館は倒壊し、展示場・サンボーホールの一角を仕切って事務室に使っている。

 用地課は市の職制上、正式の課ではない。住宅局が臨時的に設けた。職員十三人。仮設住宅や公営住宅の用地確保に走る。市内約二万九千戸の仮設用地はようやくめどがつきつつあり、今後は公営住宅用地が最大の課題になる。

 三年間で七万二千戸を目指す市の住宅整備緊急計画。公団・公社分を含めた公的住宅は三万八千五百戸で、民間住宅を上回る。

 市は被災者向け公営住宅六千戸と、倒壊した市営住宅の再建千五百戸の建設を担当し、震災前の四倍以上のペースになる。

 だが、用地確保が前提だ。通常は一、二年前から用地を手当てして建設に着手する。今はそんな余裕はとてもない。

 「市の手持ちの遊休地の多くは仮設住宅に使った。民有地の場合、十、二十の話があっても建設可能なのは一つか二つしかない」

 建設先が決まっているのは、西神南ニュータウンなど市有地三カ所計約四百四十五戸だけだ。

 仮設住宅は郊外が敬遠された。公営住宅も既成市街地でかなりの数を確保する必要があるが、一カ所二千平方メートル程度の土地が望ましい。震災後も土地売却の情報はあまり増えず、金額交渉まで進んだ例はないという。

    ◆

 用地探しにはもう一つの壁がある。「地価の高いところは遠慮してくれ、と言われている」と担当者。収入は減り、支出は増える一方の財政事情である。

 災害公営住宅の建設費は、国が三分の二を補助するが、激甚災害地の指定で、四分の三にかさ上げされた。しかし、用地費には国の直接の補助がない。用地は自治体の財産になるとの理由で従来から補助がなく、激甚災害でも変わりはない。

 六千戸分の用地費は約千四百億円。費用は市債発行、つまり借金で調達する。家賃を低く抑える公営住宅の収支は赤字で、市はこれまで年間一戸当たり約十五万円を補てんしてきた。新設の場合、地価の関係から赤字はさらに膨らむ。

 震災で住宅困窮者が大量に生まれた。しかも地価の高い既成市街地が被災した。家賃はもちろん高くできない。国を頼りにせざるを得ない、と市は言う。

 建設省住宅整備課は「これまで二回の補正予算で、住宅対策は約二千六百億円にもなる。あらゆる手段を講じている」とする。

 実は、用地費には家賃収入補助という制度がある。年間、用地取得費の三・四%を補助名目で国が負担、今回、当初五年間は四・五%に引き上げた。「思い切った支援は実施済み」というのが同省の言い分だ。

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 「国は施設を元に戻すことには確かに手厚かった。三年で施設は復旧するかもしれないが、財政力は三年では戻らない」と市財務課。公営住宅の用地取得や都市計画事業など、被災地に限らない事業になると国の対応は鈍くなるという。

 市の復興計画は今月末にまとまる。秋の補正予算や来年度予算概算要求に向けた要望活動が本格化する。各省庁の概算要求が出そろう八月末までが、大きなヤマ場になる。

 住宅用地費への補助を、どういう形で国に求めるか、「予算要望書」の文案は今、作成中だ。

1995/6/27
 

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