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(4)特別法の行方 全国バランス盾に渋る
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 大阪商工会議所で二十五日に開かれた近畿ブロック知事会議。福井、三重、徳島県を含む二府七県の知事が、ぐるりと円形に座り、横山ノック(山田勇)大阪府知事も姿を見せた。

 席上、貝原俊民兵庫県知事が、近畿全域をカバーする「広域防災機構」の設立を提案。ちょうど向かい側の横山知事も即座に「大賛成」と応じ、さっそく検討を始めることが決まった。

 会議に向け、兵庫県の担当者が、根回しに力を入れたのは、国に出す知事会議の緊急要望だった。

 八項目の要望は、近畿圏を地震防災対策強化地域に指定することなどを盛り込み、「復興計画の樹立と着実な推進」で締めくくる。そこでは、政府の財政措置と規制緩和推進の必要性を指摘、「法的措置を含めた所用の支援措置を」と記している。

 知事会では、要望のポイントを事務局が読み上げる形で決まったが、県の担当者は「法的措置」の意味合いを話す。

 「震災復興特別措置法制定を、とずばり書くことも検討したが、あまり県の復興を強調すると、近隣府県の反発を招きかねない。でも、その趣旨は生かされたと考えている」

    ◆  

 職員が貝原知事の特命を受け、特別措置法の研究を始めたのは、震災から間もないころだ。

 「震災前の状況に戻すだけでは駄目だ。モデルになる地域づくりを」と、知事は強調するが、実現には膨大な費用がかかる。震災で税収の落ち込みは確実で、国の財政支援は欠かせない。参考にしたのは、一九七一年に成立した沖縄振興開発特別措置法だった。

 法制定の要望活動は、早くも二月三日にスタートする。小里貞利震災担当相を皮切りに、大臣や国会議員が訪れるたびに、要望を繰り返した。県で法素案ともいえる要綱をつくり、非公式に省庁に示した。

 しかし、要綱までつくったことが、かえって国の反発を招き、要綱は幾度も書き換えられた末、表に出ることはなかった。

 その中身は、復興事業の国の責任を明らかにするため、被災地自治体がつくった復興計画案を首相が承認するよう規定。さらに、事業の実施には「国の負担または補助の割合の特例を設ける」「地方債に特別の配慮をする」など、国の財政支援を明記する内容だった。

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 「なぜ兵庫県だけが、という冷たい風が吹いている」。法制定に向け、折衝を続ける芦尾長司副知事は言う。近畿知事会の要望は、逆風への一つの対抗策だが、それでも間接的表現にせざるを得ない現実がある。

 大蔵省主計局は「兵庫県、神戸市は全国でも十指に入る財政力を持つ。震災と言っても(他府県の)反発は出る」と話し、財政支援には、全国的な予算配分のバランスが必要・との見解を示す。

 政府の阪神・淡路復興委員会の下河辺淳委員長は五月二十二日、提言をした。

 「計画の前期五カ年で、復興に緊急で必要不可欠な施策を特別事業に位置付ける。国は事業への取り組み方針を明らかにし、円滑な実施のため特段の措置を講じること」

 県は、法制定を求めながらも、提言の「国の特段の措置」に注目している。「形にはこだわらない。実が取れれば」。貝原知事は最近、こんな言い方もする。

 「特段の措置」の中身が明らかになるのは、七月末と目される。各省庁が一九九六年度の予算編成に向け、大蔵省への概算要求をまとめる時期に当たる。

1995/6/29
 

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