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(9)政治の力とは 正念場で試される役割
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 国会内の与党政調会議室。厚生省社会援護局、建設省大臣官房などの課長クラスが顔をそろえた。

 六月十四日、「与党災害復興プロジェクトチーム」の審議は、関係省庁の説明で始まった。仮設住宅のエアコン設置や地滑り対策など、決定済みの事業だけに、簡単な質疑応答で、会合は一時間足らずで終わった。

 プロジェクトチームは、自民、社会、さきがけの与党三党が設置、議員十三人で発足した。座長は自民党の村岡兼造・元運輸相。復旧、復興への施策は、ここで各省庁と協議する。

 その会合は、三十回近くを数えた。がれき処理、失業対策、住宅復旧…。四月二十四日にまとめた第三次報告書は、仮設住宅へのエアコン設置などに「適切な対応」を求めた。

 五月十八日、村山首相は、衆院予算委員会で「人命優先の立場から、最善の方策を取る」と答弁。同二十五日、設置は正式に決まる。チームの一人は「関係省庁に対応を迫るなど、与党としての役割を果たせた」と話した。

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 政府と与野党は、震災後、現地にも対策本部を置いた。政府の現地本部設置の閣議決定は一月二十一日。与党三党と新進党の本部開設は、同三十日だった。共産党も救援センターを置いた。

 混乱を極めた当時、問題の解決は、時間との競争になる。国会議員も現地と東京で動いた。社会党の代議士は、こんな話もした。

 「地震に巻き込まれた場合、労災と認めるかどうか、震災直後、労災認定が問題になった。労働省で、『救済措置のためには、少々の無理も承知で』と、官房長らをくどいた。検討に三日かかったが、国は労災適用を認めた」

 政府は「現地で即決する機動的な体制をとれた」とし、与野党とも「被災地の声を政府に届けることができた」と口をそろえる。その声は、国会での質問、政府への対応追及などに生かされたという。

 しかし、政治がどこまで力を発揮し得たか。自治体の受け止め方は複雑だ。

 神戸市の幹部は、政府の現地本部について「制度内での事務処理は早まったが、補助率の引き上げ、税制の優遇措置などを実現するには、中央での折衝が不可欠だった。最終的には霞が関の判断を仰がなければならなかった」と振り返る。

 三月末、そろって撤収した与党三党、新進党の現地対策本部には「ボランティア活動にとどまっていた」と、存在感の薄さを指摘する声がある。

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 六月十三日の衆院本会議で、新進党が提出した内閣不信任決議案。与野党の賛成、反対討論は、それぞれに震災の対応に触れた。

 新進党の羽田孜副党首は「初動の遅れで多数の人命を失った。無責任、無能力政権だ」と、手厳しく批判。共産党の山原健二郎議員は「個人補償が不可欠だが、政府は何の措置もとっていない」と指摘した。

 自民党の亀井善之議員は「村山政権は、被災地の復旧、復興に総力を挙げている」と反論した。

 神戸市の復興計画が、六月末にまとまり、兵庫県の計画も近く策定される。そして、九六年度予算の概算要求が間もなく始まる。

 連立与党のプロジェクトチームは、計画具体化のため、概算要求への組み入れを関係省庁に求める方針だ。次回会合は「連立」を問う参院選後になる予定だ。震災の復旧、復興はどうあるべきか。政治の役割と力が、あらためて問われる。

1995/7/4
 

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