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阪神・淡路大震災でのボランティアの活躍が制定のきっかけとなった特定非営利活動促進法(NPO法)が十九日、衆院本会議で可決、成立した。被災地で活動を続けるNPO(非営利団体)からは「社会的に認知され、活動がやりやすくなる」と歓迎の声が上がるが、優遇税制が先送りされるなど「現時点ではメリットに乏しい」とする団体も少なくない。法整備が、NPO活動が盛り上がる契機となるか-。
「行政や企業とやっと共通の土俵に立てた。すぐにでも申請したい」
神戸市東灘区のNPO「コミュニティー・サポートセンター(CS)神戸」代表の中村順子さんは、安どの表情を浮かべた。一年前から法案成立を前提に組織整備を進めてきた。
CS神戸は震災後、高齢者や障害者、仮設住宅支援などの活動を展開。一年余りで三十五の事業を展開、年間予算約六千万円の団体にまで成長した。
活動の広がりに対応し、別に三つの団体を発足させたが、いずれも任意団体のため、銀行口座や電話の契約などは中村さんの個人名義。事務所の賃貸契約の際は、不安がる企業側を納得させるため、常任理事六人が契約書に判をつく”連判状”を求められたという。
CS神戸は県から被災地での雇用開発の委託事業を請け負っている。任意団体への委託は極めて異例。中村さんは「相手方も信用保証の点から法人格を望む。今後は委託事業も増え収入の安定につながる」とする。
CS神戸も収入の半分は民間基金からの助成や寄付に頼る。期待された優遇税制は付帯決議で「二年以内に検討する」と先送りされた。
「阪神・淡路コミュニティ基金」事務局次長の市村浩一郎さんは「税制や寄付の優遇なしに、行政、企業に次ぐ第三のセクターとしての役割は期待できない。このままでは補助金の受け皿団体を増やすだけ」と批判する。
課題は残っているが、法案成立が「一歩前進」となるか。「この二年は各団体が自らの活動を見直す宿題期間」と中村さん。ボランティア団体は”個人商店”的な側面もあったが、今後は会計や運営面の透明性がより求められる。法整備を契機にNPOの活動を充実させられるかは、NPO自身の課題でもあるという。
1998/3/20