「阪神・淡路ルネサンス基金(HAR基金)」
震災後、住民主体の復興まちづくりを資金面で支えてきた。五年目の今年は、最終年度。最後の助成対象となった市民グループの活動計画発表会が三日、神戸市内であった。
今回は、南芦屋浜の復興公営住宅に作られた「だんだん畑」の園芸活動を通した住民の交流推進など、十三団体に計五百万円が助成される。
同基金は、学識者やコンサルタントらが九五年秋に設立。主に、行政支援の乏しい、都市計画事業地域以外の「白地地域」の助成策として使われてきた。
復興映像記録の製作、わが町再発見、コレクティブ・ハウジング事業推進…。助成事業は多岐にわたる。これまでに延べ九十一団体に約五千万円を配布した。
当初は寄付を募り、五年間限定で二十億円の基金を設ける構想だった。だが期待の額は集まらず、各団体への一部助成がやっと、という実情だった。
それでも、発起人の一人で神戸市灘区のコンサルタント、小林郁雄さんは、同基金が「まちづくり」を支えたことを評価する。公開審査によって自らの活動の評価を受け、各団体が交流する機会にもなったという。
被災地のNPO(非営利組織)と神戸青年会議所が中心となり設立した市民団体「しみん基金・KOBE」も二十日、まちづくり活動などへの助成申請を始めた。県も今年度から、対象を県全域に拡大した。「まちづくり」への支援が着実に広がる動きを見せる。
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その先進地が、東京・世田谷にある。HAR基金が参考にした「世田谷まちづくりセンター」を訪ねた。
九二年に開所し、公益信託「世田谷まちづくりファンド」を設立した。十年間で五億円を目標に区民や企業、行政から寄付を募る。総額は現在、一億三千万円。毎年五百万円ずつ、延べ百五十団体に助成した。配分は公開審査。各団体に自立を促すため、助成は最長三年と決めている。
折戸雄司所長は低金利による資金運用の厳しさを説明しながら、助成したグループがファンド支援コンサートを開き、収益を基金に寄付したことを話した。
「まちづくりファンドをみんなで支える流れが出てきた」と、区民に浸透してきた自治意識を喜んだ。
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被災地で進む住民主体の「まちづくり」。その動きの一方で、コンサルタントなど専門家への支援制度は確立していない。
建築家、野崎隆一さんは、神戸市東灘区魚崎など「白地地域」で共同再建などの支援に当たってきた。共同再建はHAR基金の助成を受けたが、野崎さんには神戸市専門家派遣制度の助成以外、報酬はない。
制度は、事業具体化で最大五百万円が支払われるが、それまでは勉強会などに十五万円、具体化への話し合いに一件五十万円が出る。野崎さんは「将来の五百万円より、目前の五十万円がありがたいときがある。事業化できるかどうか分からないときこそ、より多くの支援を」と訴える。
専門家が入って「まちづくり」を進める取り組みは被災地で相次ぎ、復興基金を活用して、昨年度末までに全体で約四百五十件が助成を受けた。だが実態は、野崎さんのように半ばボランティアに頼ったケースがほとんどだった。
住民主体の「まちづくり」を根づかせるために、その受け皿となるNPOを支える「社会の仕組み」づくりが急がれる。
1999/10/21