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(2)市場、商店街が模索する 生き残りへ地域と一体
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 「旬」「鮮」「菜」「味」「匠」「夢」…。

 東西わずか百メートルほどの通りのアーケードに、十枚の大きな旗が連なっている。阪急春日野道駅近くにある大日六丁目商店街。訪ねると、色鮮やかなその旗にまず目がいく。地盤沈下が著しい商店街ににぎわいをと、商店会が考えた演出だ。

 周辺の工場移転などで、震災前から客足は減り続けていた。それに、震災と不況が重なった。四十三軒あった店は、三十軒に減少。客数も、かつての六割にとどまる。そこへ昨年夏、大型食料品スーパーの出店計画が持ち上がった。

 存亡の危機に、商店主らはスーパーと交渉、今年夏の開店時期を来春に延期させた。その間、週一回の勉強会を重ね、考え出した生き残りへの道が、この目を引く演出と、復興住宅に注文の品物を届ける宅配サービスだった。

 商店街の約一キロ南に広がる復興住宅HAT神戸。将来的には人口三万人の街になるが、高齢者が多い。六月から始めた宅配の試みは、震災で生まれたそうした世帯への優しさを込めた。

 手作り、こだわり、産地との交流-。例えば、丹波の黒豆を使った豆腐、自家茶園の無農薬茶など、店自慢の品は百を超える。

 商店街にある市有地を借り、「にぎわい広場」もできた。そこで、青空市や介護相談を開くなど、さまざまなイベントを行う。

 「危機感や、地域の拠点を目指す思いの共有から取り組んだ。これが最後の機会かもしれない。何としても継続し、地域の信頼を取り戻したい」。大日六商店会会長の城戸秀則さん(46)が、再生にかける意気込みを話した。

 

 神戸・新開地。

 往時のにぎわいをと、再開発や共同再建ビルの建設などが進む。が、肝心の商店街には一向に活気が戻る気配がない。今年四月にできた場外舟券売り場も、活性化のカンフル剤にはなっていない。「休廃業を考える商店主は三割」。昨年九月、まちづくり協議会が行ったアンケートで衝撃的な結果も出た。

 これに危機感を募らせ、商店主らが九月末に発足させたのが、非営利法人「新開地まちづくりNPO」だった。震災前から活動するまちづくり協議会を母体にした。

 拠点となる「自治センター(仮称)」が十二月に開館する。一階は飲食施設、二階ホールでは地域向けの芸術文化事業を行う。NPOが運営し、ここから町全体を活性化させる狙いだ。

 理事長の青木寛さん(44)は「商店街はまちの背骨。いかに地域に広げられるかがカギ」という。商店街を包むまちづくり。今求められるのは、自らがそれに参画すること、と実感する。

 空き店舗が目立つ市場にボランティア団体が入居し、共存共栄を目指す試みも、神戸市内で進んでいる。

 神戸市東灘区の御影市場「旨水館」では、神戸市と復興基金の家賃補助を受けて「東灘・地域助け合いネットワーク」が事務所を構える。地域の高齢者の外出介助などに当たるが、いずれは市場の商品の宅配、送迎サービスなども視野に入れる。市場の活性化にどれだけ結びつくのか、未知数の部分もある。しかし、生き残るには、行政の支援はもちろん、これまで以上に地域との一体化が不可欠と、商店主らは思う。

 商店街や市場の店主らが中心になった、新たなまちづくりが、被災地で芽吹き始めている。

1999/10/18
 

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