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(1-2)再生に不況の壁 当初計画の見直し視野に
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 震災復興を目指し、被災地で進められている土地区画整理、市街地再開発事業などの新しいまちづくりは、都市計画決定されてから四年七カ月が過ぎた。区画整理では、唯一、残っていた神戸市東灘区の「森南第三」の事業計画が決定したほか、仮換地指定が各地で始まった。再開発事業も進んでおり、震災前と様変わりした街並みが登場しつつある。しかし一方で、経済情勢の変化で、事業によっては計画の見直しを検討するなど新たな壁に直面するケースも出てきた。住宅再建に取り組む個人への支援策をはじめ、なお課題は多い。

区画整理
仮換地指定率54%に 15地区すべてで具体化

 土地区画整理事業は、「森南第三」で今月七日、神戸市が震災から四年九カ月近くを経て、事業計画を決定。これで、区画整理の対象になった十五地区すべてで、事業が具体化することになった。仮換地指定までに時間のかかっていた「芦屋西部第一」「同第二」でも、今年夏までに仮換地作業がスタート、今後、本格的なまちづくりに着手する運びとなっている。

 区画整理の対象は、十五地区二百五十四ヘクタール。仮換地指定率は平均五四%で、今年一月時点から九ポイントアップした。市内九地区で事業が進む神戸市の仮換地指定率は五七%。同市によると、仮換地作業は、来年三月末までに八〇%程度まで進む見込みという。

 とりわけ順調な「鷹取東第一」「六甲道駅西」は、仮換地指定がほぼ完了。ゆったりとした道路がすでに街中を走るなど装いを一新している。また、西宮市の「森具」も宅地整備が進み、再建が本格化している。

 事業化が遅れていた「森南第三」では、震災直後に都市計画決定された十七メートル幅の道路を廃止、新たにJR神戸線沿いに九メートル幅の道路を新設することなどを盛り込んだ事業計画を決定。今後、地権者らで構成する区画整理審議会の立ち上げ、今年度中には仮換地指定が始まる見通し。

 市都市計画局は「事業の進ちょくは総じて早い。住民が真剣にまちづくりに取り組んできた結果」とし、「宅地や道路など基盤整備が進んでいるところでも、肝心の住宅再建は個人の資金力にかかる。今後は、再建を後押しする優遇策など、人口回復に向けた取り組みの充実が求められる」と話す。

メモ

土地区画整理事業

 権利者が土地を提供し、広場、道路を整備する街づくりの手法。そのために必要な土地の配置替えを決めるのが仮換地指定。減歩率は権利者が提供する土地の、元の土地に占める割合で、負担軽減のため実質10%未満に抑えられた。

■再開発
空き床懸念 問われる集客力

 十二地区三十三ヘクタールで進む再開発は、神戸市灘区の「六甲道駅南」で十月十日、初の一般向け分譲住宅の抽選会が行われるなど八七%で事業計画が決定、受け皿住宅の建設も進む。一方で、「JR新長田駅南」は、同市が当初計画の見直しも視野に再検討を始めた。不況などを背景に、ビルを建てても入居者が見つからない空き床が大量に発生する懸念が各地でも広がっており、再開発事業は大きな分岐点に差し掛かっている。

 事業計画が決まっていないのは、新長田駅南の第二、第三地区の一部。同地区は面積二〇・一ヘクタールを三つに分けて実施。約三十棟の再開発ビルが計画されているが、現時点で着工しているのは、完成分を含めて七棟にとどまっている。

 見直し具体案として、▽超高層ビルの中層への縮小▽学生や高齢者賃貸などのニーズへに対応・などがあがっている。

 このほか、阪急西宮北口駅前では核店舗が出店を一部断念。宝塚駅前でも、テナント誘致が進まず、代わりに博物館構想が浮上するなど、計画を見直す動きが広がりつつあり、今後は人を集める仕掛けづくりが求められるといえそうだ。

メモ

市街地再開発事業

 ビルを建て土地を立体活用し、広場や避難路を設ける手法。地権者は所有面積などに応じビル床を取得。今回はすべて緊急・公共性が高い2種事業。地権者全員の同意が必要な1種事業と違い、市は売買契約を結んだ地区ごとに着工できる。

■地区改良
復興3カ年計画 52%の住宅完成

 震災後に始まった住宅地区改良事業は、七地区二十七ヘクタール。復興三カ年計画の中で、目標とされた住宅建設戸数は六百九十七戸で、うち五二%にあたる三百六十五戸が完成している。

 JR西宮駅北(西宮市)で百四十一戸すべてが完成したほか、若宮(芦屋市)でも目標の四十四戸が出来上がり入居も完了した。土地区画整理との合併事業となった築地(尼崎市)も、四割を超す住宅が完成。区画整理と合わせ、街並みの再建が進んでいる。同様に再開発との合併事業となった昭和通・西大物町(同)では来年三月をめどに、四十戸が着工する。

 他に住宅未着工の地区が二地区があるが、いずれも被害が比較的小さい地区で、道路の整備などが先行して進められている。

メモ

住宅地区改良事業

 大きな被害を受けた住宅密集地で、自治体が住宅を買収。対象地域を整理し、被災者らのために公的賃貸住宅を建てる事業。行政が担う事業が基盤整備までにとどまる土地区画整理に対し、行政が住宅建設まで行う。

1999/10/17
 

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