記事特集
阪神・淡路大震災の被災者を対象にした兵庫県社会福祉協議会の「震災特例貸付」で、債務者が行方不明となり、未返済のまま償還期限から十年を過ぎ、民法上の「時効」が成立したケースが昨年九月、初めて発生していたことが分かった。新年度以降、時効となる未返済金はさらに増加する見通しという。県は「返済能力のある人には返していただくのが大前提」と強調しつつ、大災害に伴う生活困窮者向け融資だった点も配慮。債権整理に向け、返済免除規定適用について国と協議を進めている。(小森準平)
県社協によると、時効が成立したのは一九九八年九月が返済期限だった一件七十六万円。一度も返済はなく、連絡がつかない状態が続いてきたという。
同貸付は、低所得者らを対象にした国の「生活福祉資金」の特例として実施。使途に応じて三つの区分を設け、九五-二〇〇〇年、約六万件計約百三億を貸し付けた。うち約三万件計約四十五億円が〇八年三月現在、未返済となっている。
債権回収が難航しているのは、震災直後の混乱期の融資で、連帯保証人を必ずしも求めなかったことなどが背景。特例措置のため、生活福祉資金には設けられている返済免除規定もなく、本人、保証人とも破産している▽二年以上、所在不明になっている-など通常なら返済免除となるケースも「未返済金」として残ったままになっているという。
債権回収を担う県社協は今後、督促状に生活状況を確認する内容を加え、返済免除規定適用を視野に滞納者の現状確認を進めていく方針。
時効の発生を受け、県社会援護課は「完済した人に不公平感を招かないことなどに配慮しつつ、望ましい債権整理の形を模索中」としている。
メモ
【震災特例貸付制度】
当面の生活資金用の「小口資金」、仮設住宅などから恒久住宅への転居世帯を対象にした「転宅資金」、生活再建を図る「災害援護資金」の3種類の貸し付けがある。限度額はそれぞれ20万円、50万円、150万円。原資は県が全額を県社協に無利子で貸し付け、4分の3を国が県に補助した。
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