記事特集
阪神・淡路大震災の被災者に、国と自治体が貸し付けた「災害援護資金」の未償還額が二〇〇八年九月末現在、約二百三十二億円に上っていることが九日、兵庫県の調べで分かった。前年十月からの一年間で新たな償還は二十億円弱しかなく、一一年五月から順次迎える国への償還期限時点で、自治体がかなりの「肩代わり返済」を迫られる可能性が出ている。(小森準平)
災害援護資金は、震災後数回に分け県内で約五万六千四百件、計約千三百九億円が貸し付けられた。当初、国への償還は〇六年五月から始まる予定だったが、被災地の要望などを受け、償還期限は五年延長された。
しかし、被災者の厳しい生活実態などを反映して償還は滞っている。〇八年九月末現在、償還額は計約千四十四億円で貸付総額の八割弱。全額償還を終えたのは約三万九千五百件で総件数の七割程度にとどまっている。
自治体側は未償還の約二百三十二億円を、分割返済に応じる「少額償還」▽借受人・保証人の所得が低いなどの「徴収困難」▽借受人・保証人が死亡するなどの「徴収不可能」-に三区分しているが、「少額償還」は百九十一億円程度。残る約四十一億円は回収のめどが立っておらず、最終的に焦げ付く恐れが強い。
一方、自治体から国への償還も免除される「償還免除」となったのは、この一年間で二百十六件増え、千五百八十七件(計約三十二億円分)。借受人の死亡や重度障害があれば自治体判断で償還が免除できるなど、〇六年に免除要件が緩和されたのを受けて急増した。
県は国に、償還期限の再延長や生活保護世帯などを償還免除にできるようさらなる要件緩和を要請している。県社会援護課は「国は回収実績を今後の判断材料にする考えを示している。各市町には、被災者の窮状に配慮しつつ、悪質な滞納者には厳しい対応を求めていく」としている。
メモ
【災害援護資金】
災害弔慰金法に基づき、全半壊世帯に350万円を上限に貸し付ける制度。事務は市町が担当する。原資は3分の2を国が都道府県・政令市に貸し、残りは都道府県(政令市以外の市町分)と政令市が負担する。焦げ付き分は国への償還を含め、自治体側が全額を穴埋めする必要がある。
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