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まちをつくる 二つの震災、続く葛藤 災害列島に生きる

(8)困難な集約 巨大事業、計画倒れ懸念
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現地での再建を訴える住民が、住宅の跡地に黄色いハンカチを取り付けていた=仙台市若林区荒浜
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現地での再建を訴える住民が、住宅の跡地に黄色いハンカチを取り付けていた=仙台市若林区荒浜

現地での再建を訴える住民が、住宅の跡地に黄色いハンカチを取り付けていた=仙台市若林区荒浜

現地での再建を訴える住民が、住宅の跡地に黄色いハンカチを取り付けていた=仙台市若林区荒浜

 数多くの黄色いハンカチが、潮風に揺れている。

 大津波で200人近くが犠牲になった仙台市若林区の荒浜地区。「故郷での再建を願う、皆のシンボルだ」。先祖代々暮らす漁師の男性(78)が、高倉健さん主演の映画がモチーフだと教えてくれた。

 仙台市は昨年12月、荒浜地区を「災害危険区域」に指定した。市街地への集団移転に対する住民の賛否は割れたままで、現地再建を求める住民らは取り消しを求めたが、6月、移転事業は始まった。

 「危険な地域から移ってもらうのは当然」と市。東日本大震災級の地震が再び起きた場合、新たに築く堤防でも津波を防げないという。ただ、市復興事業局長の山田文雄(59)は別の理由を明かす。

 「荒浜は少子・高齢化が著しく、震災前のマスタープラン(長期計画)で市街地に集約させる構想があった」

 2015年度開業予定の市営地下鉄東西線の活性化もにらみ、人口や都市機能を駅付近に集約する「コンパクトシティー」を打ち出していた。

 復興の名の下、震災前からの課題解決を一気に図る。阪神・淡路大震災後の神戸市と同じ手法だが、取り巻く環境は様変わりしていた。

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 仙台市は震災後、20年度までの長期計画を修正した。人口減、超高齢社会を想定。インフラ整備に使える予算は限られる一方、高度成長期に造られた道路や施設が耐用期限を迎えるため、中長期的なコスト削減が不可欠だとする。

 阪神・淡路では、神戸市は「15年後は人口増が見込める」とし、震災前からの副都心構想を基に巨大再開発を推し進め、郊外に復興住宅を建設した。だが長期計画で170万人と見込んだ人口は154万人にとどまり、国が示した経済成長予測も完全に外れた。

 神戸の審議会で会長を務めた新野幸次郎(87)=神戸大名誉教授=は「長期計画を議論したのはバブル経済末期。その後、事業を絞り込んだが、結果として、将来を見通すことができなかった」と悔やむ。

 将来を見据え、兵庫県や神戸市が再三、国に実現を求めながら「他の自治体と不公平」などと拒まれた経済特区構想。東日本大震災後、昨年12月に復興特別区域(特区)法が成立し、企業誘致のための減税などが実現した。宮城県や仙台市が事業化を急ぐ。

 「17年前は国家レベルの問題として捉えられなかった。東日本の復興こそ、今後のモデルになってほしい」

 新野の願いは、阪神・淡路で復興に携わった行政職員や研究者らにも共通する。

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 一方、復興まちづくりの巨大な事業規模には懸念も強い。宮城県内の建築制限区域は阪神・淡路の4倍超の約1500ヘクタール。全人口に対する指定区域の割合は、名取市が神戸市の14倍、女川町は184倍に上る。職員確保が課題だ。

 名取市の復興アドバイザーを務めた元神戸市幹部の中山久憲(63)は「圧倒的に少ない人員で、巨大な事業をやらねばならない。本当にできるのか」と危機感を募らせる。

 県によると、区画整理を実施する33地区のうち都市計画決定済みは6地区のみ。来年3月11日の建築制限の期限切れまで、あと半年しかない。

 中山は指摘する。「神戸でも区画整理の事業完了に10年計画で16年かかった。計画倒れにならないよう、絞り込みも検討すべきではないか」

 集団移転も住民との協議が難航し、集落の集約化に頓挫する市町が相次ぐ。県が当初約60カ所に絞り込んだ移転対象地は約200カ所に拡大した。事業認可されたのは4割に満たない。=敬称略=

(安藤文暁)

2012/8/26

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