1年次の前期は、国語、数学、体育、生物、公共の5教科のみ。いい意味でのカルチャーショックの連続です
1年次の前期は、国語、数学、体育、生物、公共の5教科のみ。いい意味でのカルチャーショックの連続です

小さく生まれて知的障害や自閉症、肢体不自由のある息子がこの春、高校生になりました。
入学したのは、「多部制」の県立高校。

多部制とは、定時制高校を「朝の部(1部)、昼の部(2部)、夜の部(3部)」に分けたような学校。それぞれ希望の部を選んで入試を受け、入学後に変更はできません。1日4時間(4コマ)の授業で、「4年で卒業」が基本なものの、授業を多めにとれば3年で卒業することも可能。

息子の入った3部の授業時間は、17時25分~21時。全体の時間割で言うと、9限目から12限目にあたります。さんざん悩んだ末に、息子の希望と、「高校以降も多様な人がともに過ごすのが大事」という思いで選んだ、夜の学校。紆余曲折の高校探しについては、「大学より難しい!?ひょうごの「高校進学」~前編~
https://www.kobe-np.co.jp/rentoku/skipcolumn/202509/0019514107.shtml
など、過去のブログをご覧ください。

「知的障害のある子が高校に進む」のは、大きな挑戦です。

合格はうれしかったものの、新生活に胸を膨らませる息子の隣で、「入学式が永遠に来なければいいのに…」というぐらい、負の妄想と不安が積み上がっていた2~3月。義務教育と違い、高校には「退学」という選択肢がある。何かにつけて、先生から「いやなら辞めていいんですよ」と言われるんじゃないか、毎日付き添えと言われたらどうしよう……
知り合いの先生からは「一年目が条件闘争です!」というLINEが届き、めでたいはずの高校進学が「闘い」…と、気が遠くなっていました。

そして迎えた、入学式。服装も髪型も自由な学校で、バッチリスーツで決めてくる子、スウェットの子、髪色もさまざま。もちろん、第一ボタンを留めろとか、シャツをズボンに入れろといった指導もありません。

「入学式の校長先生の話」と言えば、「予測不能な時代を生き抜く力をつけよう!」「○○生という自覚を持ち恥ずかしくない行動を」という感じが定番(?)ですが、
「これまであなたたちにとって、『違い』は弱点だったかもしれない。でも、この学校では、違いは学びです」
という話に、まず感激。

多部制高校は、昼間働いている人はもちろん、中学時代不登校だった子や外国ルーツの生徒など、多様な背景、年齢の人が集まります。式終了後、生徒指導の先生が生徒たちとの関わりの中で感じたことを話してくれました。
「人は正しさでは動かない。温かさで動くのだと、この学校で学びました」

3部の一年生は、一クラス14人×3クラスと、40人ぎゅうぎゅうだった中学と比べかなりの小所帯。最初の一週間は1時間半程度で学校が終わるなど、ゆっくりゆっくりスタートすること、お手紙類にはふりがなが振ってあること、先生が事あるごとに「ちゃんとしろ!」ではなく「頑張りすぎないで」と発信することにも驚きました。

正面入口を入ると、先生からの日替わりメッセージがホワイトボードに書かれています。その言葉の温かさに、息子を送ったわたしのほうが泣きそうになることも。きっと、戦場に赴くように気持ちを奮い立たせて登校した子どもたちも、これを読んでほっとしているだろうなぁと、うれしくなります。

30数年前、わたしが進んだ高校は、学区で一番の進学校でした。当然のようにそこを目指し、当時は定時制高校の存在も知らなかったように思います。

「学校」と言えば、競争、序列、規律、みんな一緒…。そんな「当たり前」がない夜間定時制高校に息子を通して出会い、わたし自身が癒され、励まされています。

どの生徒もこの学校を選ぶまで、いろんな葛藤があったのかもしれない。でも、思い思いの服装で笑い合ったり話し込んだり、「青春」を満喫している高校生たちはめちゃくちゃまぶしくて、こんな人間的な学校こそ「当たり前」になればなぁ、と思うのでした。

息子はさっそく念願の陸上部に入り、同級生と下の名前で呼び合い、自分から進んで次の日の用意をするように。昼間の居場所は相変わらず課題ながら、「学校、めっちゃ楽しい!」「ぼく、高校1年生!」と、張り切る姿を見ると、この高校生活が続くようこちらも頑張ろ…と、ネガティブ全開だった心もほぐれてきます。

入学式後の先生方との面談では、単位が取れるか、卒業できるかを心配されました。
きっといいことばかりではなく、もしかしたら、クラスメートと一緒に卒業はできないかもしれない。でも、一日でも、一週間でも、一カ月でも、ここに通えてよかった。
この出会いがきっと、息子とわたしの糧になるはずと思いながら、暗闇に浮かび上がる夜の学校へ、息子を迎えに行く毎日です。

▽萩原 真(はぎわら まこと)
【降っても晴れても すきっぷびより】は、すきっぷスタッフで元記者の萩原が、3人育児のドタバタや障害のある息子との生活で感じたこと、うれしいことから尽きない悩みまで本音満載でお届けします。