六甲山に登ると、人の気配がなくなった廃屋をよく見かける。
都市部に近いゆえだろう。神戸市の昨年の調べでは、山上で確認できた企業保養所は95を数える。このうち26は企業のリストラによる閉鎖などで遊休施設となっており、「活用の可能性がある」との回答を得たのは18にとどまる。ホテルや個人の別荘も含め、廃屋が点在するのは六甲の残念な点だ。
山域は瀬戸内海国立公園に属し、建物の増改築には環境大臣の許可が要る。建築面積などの規制も厳しい。乱開発を防ぐ狙いだが、廃屋の売却や再利用が進まない一因とも指摘される。
兵庫県と神戸市は昨年7月、知事や政令市の市長も特例を定めて許可できるよう、国家戦略特区として政府に要望した。山上には風致地区や緑地保全に関する市条例などの網もかかり、乱開発につながるとは考えにくい。
環境省の回答はこうだ。国立公園の保護管理は国が責任を負う。地域の開発利益から離れて、自然の価値を客観的に判断できる国が保護を担うのは、途上国も含めた世界標準である…。けんもほろろ、に聞こえる。
ただ同省神戸自然保護官事務所は「廃屋が残るままでいいとは考えていない」と話す。公園法は建物の解体や新築自体は禁じておらず、山上で建設中の会員制リゾートホテルもある。民間から要望があれば、規制の枠内で個別に対応するという。
規制緩和を呼び水にして廃屋の再利用を進めたいと考える県市。規制の枠内で、できることを考えようとする国。手法は違えど、六甲活性化を目指す点は共通する。重要なのは、民間から多彩な発想が生まれることだろう。
こんな例がある。山上で開催中の野外芸術展「六甲ミーツ・アート」(11月23日まで)。規制が厳しい国立公園内にユニークな作品群を展示できるのは、オブジェなどの一時設置を認める特区制度を活用しているからだ。
むろん特区といえど、主催企業は市や環境省などと事前相談を密にする。官民の連携で、多くの鑑賞者を呼び込んでいる。
涼夏や厳冬など平地と異なる四季を六甲山で体感できるのは、神戸の強みの一つだ。廃屋を改装し、個性的なペンションやオーベルジュ(宿泊施設付きレストラン)がもっと増えれば、観光客を引きつけられるのではないか。








