先月の全国図書館大会で、松井清人・文芸春秋社長が「できれば文庫の貸し出しをやめていただきたい」と、図書館に対して異例の“お願い”をしたことがニュースになった。文庫は、出版社の収益を支える柱の一つ。文庫は借りずに買ってほしい-という大手トップの発言は、出版業界の苦境をあらためて印象づけた。
版元と連動するように書店業界も厳しく、調査会社によると、2000年以降に全国で書店が4割も減ったという。インターネット通販や電子書籍の利用者拡大なども大きく影響している。
こうした中、書店を応援しようという動きが各地で見られる。兵庫県内の書店好きの有志は、14年から「神戸書店マップ」の制作に取り組んでいる。神戸市中央区内の書店や古書店を網羅し、営業時間、特色なども記した。17年度版が発行されて、同区の書店や図書館、JR三ノ宮駅の市総合インフォメーションセンターなどで配布されるという。
この地図の新旧を比べると、なくなってしまった店がある一方、元町などで新しい古書店ができていることも分かる。
書店側も、紙の本に関心を持ってもらう地道な努力を続ける。
尼崎では、お気に入りの本を紹介し合うイベント「ビブリオバトル」を店内で行ったり、姫路では店の前で朝市を定期的に開催したり。大阪の書店は、本紙「随想」を執筆中の芥川賞作家・滝口悠生さんの自宅本棚を一部再現し、そこに並ぶ本のフェアを行った。
三木市在住の作家・福田和代さんは「書店はサロン的な機能を持ち、店員さんと本についての会話を楽しむことができる。そこには(本の)網羅性と一覧性があり、知らない世界が広がっている」と話す。福田さんは子どもの頃、100円玉を3枚握りしめて書店に行き、買える文庫本を探した。その楽しさが忘れられないという。
岩波書店の岡本厚社長は、10年ぶりに改訂した広辞苑について、「項目を探し、自分で引く経験が大切。隣の言葉を読んだりして、新しい発見があるのは紙の辞書ならでは」と強調する。これはそのまま書店の特長と重なる。
ネットで物事を調べたり、本を検索したりするのは効率的だが、自分の興味の外にある世界に接することは難しい。書店というリアルな場所で新たな本に出会う意味は、まだ十分にある。








