論ひょうご

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 新神戸駅を出発した上り新幹線は、全長16キロ余りの六甲トンネルを抜けると、程なく尼崎市内でJR宝塚線の上を通過する。2005年4月25日、快速電車が脱線し、乗客106人が亡くなった事故現場の急カーブは、ここから約3キロ南にある。

 台車に「破断寸前だった」ともされる大きな亀裂が見つかった博多発東京行き「のぞみ34号」が、宝塚線をまたぐ高架を走り抜けたのは11日午後4時ごろか。焦げたような臭いにモーターがうなるような音、さらには立ちこめるもやと、それまで車内では数々の異変、異常が確認されていた。

 この時、JR史上最悪と言われる12年前の大惨事が、乗務員らの頭をよぎらなかっただろうか。複数の異変を放置すれば、新幹線ではそれ以上の大事故につながりかねないと、不安を募らせていた者もきっといたに違いない。現に岡山駅で乗り込んだ保守担当社員は「停車して点検すべきだ」と東京の指令所に進言していたという。

 それでも「走行に支障はない」と点検は見送られた。次の新大阪駅でJR西日本からJR東海の乗務員へと運転が引き継がれたが、結局その後、再び異臭が確認され、名古屋駅で点検の上、運転が打ち切られた。

 「同様の異変を確認しながら、なぜうちは止められず、東海は止めることができたのか」。西日本の幹部や現場には大きなショックが広がっているようだ。車両からの「警告」に反応できなかった西日本と、深刻に受け止めた東海。新幹線を一体的に運行しながら、この違いは何なのだろうか。

 JR西は今回の事態を受け、異常がないことを確認できない場合は、ちゅうちょなく止める▽異音、異臭、もやなどが複合的に発生した場合は、直ちに運転を見合わせて車両の状態を確認-などを社員に徹底させるという。至極当然なこと、基本中の基本だ。

 改めてこれらを「社員教育」として掲げねばならないところに、東海との決定的な違いがあると思えてならない。詰まるところ、鉄道の安全運行を担う企業、社員としての責任と行動である。12年前の脱線事故で得た教訓に基づき培ってきたはずではなかったか。

 年末年始を迎え、新幹線利用も増える。「振り出しに戻った」との覚悟で原因解明と安全最優先を実践することが、利用者や脱線事故の被害者に報いる唯一の道だ。

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