論ひょうご

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 個人の遺産を社会貢献に寄付、という記事をたまに見かける。崇高な志だけでなく、なによりまとまった財産を持つ一部の人の話だと、縁遠く受け止めがちだ。

 しかし未婚率や高齢化率の上昇などで単身世帯が増えていけば、遺産をどう使うかは多くの人に身近な問題となるのではないか。

 配偶者や子などの法定相続人がいなければ、預貯金や土地は最終的に国庫に納まる。それなら少額でも自分で使い道を決めたいという人が増えておかしくない。

 終活ブームも相まって、遺言書に寄付先や寄付目的などを記す「遺贈寄付」に関心が高まっている。兵庫県内のNPO活動を支援する公益財団法人「ひょうごコミュニティ財団」(神戸市中央区)には最近、十数件の寄付の相談が届く。相続人がいても遺産の一部は寄付に、という例もある。

 遺産で基金を設け、助成先を募る。あるいは県内のNPOを紹介する…。遺産活用のメニューはさまざまだ。「寄付者の方と話し合いを重ね、志を長く生かせる手法を探る」と、代表理事の実吉威(たけし)さんは話す。

 一方で、現実には使われるあてもなく漂う多額のお金が存在する。その一つは金融機関で10年間出し入れのない「休眠預金」で、年間700億円程度にのぼる。

 預金者の申し出がなければ、国の指定団体などを通して各地の民間公益活動に助成する休眠預金活用法が2年前に成立した。NPO団体の間には、活動強化につながるとの期待があると聞く。

 ただ法の基本理念には、「社会の諸課題を解決するための革新的な手法の開発」「成果」「目標」といった表現が目に付く。

 目標を定め、大胆な手法に挑み、成果を上げられる団体が対象と受け取れる。公益活動にまで成果主義を導入しようとする国の思惑が透けて見える。

 施策の網から抜け落ち、成果も解決策も容易に見通せないテーマに地道に取り組む団体は数多い。そこに支援が届かなければ、社会のひずみは広がるばかりだろう。

 官を頼むだけでなく、住む人の思いや志を受け止めて民主導で多様な活動を進めることが、これからの地域社会に不可欠だ。

 命には終わりがあり、お金も墓場まで持ち込めない。だが志は、遺産に託すことで生き続けられる。額の多少ではなくその志を、社会全体で尊重したい。

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