論ひょうご

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 数年前まで年に1度、但馬地域を訪ねて地元の若手経営者の意見発表を聞く機会があった。

 但馬の魅力は? 但馬を元気にするにはどうすればいいか?

 次代を担う世代の言葉は前向きで、希望とやる気に満ちていた。

 楽しく聞いているうちに、はっと気付いたのである。「但馬」という言葉の響き。何かが違う。

 地元の人は「たじま」の3音を同じ高さで発音している。大阪の「梅田」のように。

 阪神地域からの訪問者である私は、「た」の音を高く、続く「じま」を低く発音する。標準語で「神戸」と発音するように。

 注意して聞くと、どうも私だけではない。地元県民局の幹部も「たじま」の「た」だけを高く発音している。たぶん県南部から赴任してきた人なのだろう。

 「変だ」と指摘されたことはない。だが、「たじま」という単語一つで地元の人にはよそ者かどうかが分かるはずだ。同じ県内だけに違いに無頓着でいた。

 言葉の響きの差に敏感な人は少なくない。とりわけ地名をどう発音するかは気にかかる。

 姫路の「ひ」が高い関東風の発音に、姫路の人は「違う」とよく突っ込みを入れる。淡路では洲本の「も」を高く発音する人が多いが、島外の人などは「す」が高くなる。「それがむかつく」と語る洲本出身の男子大学生がいる。

 方言学の専門家である甲南大の都染(つぞめ)直也教授は、そうした例を挙げながら、言葉の地域差がもたらす心のひだに着目する。

 言葉に限らず、違いに気付かないか、気付いても知らないふりをする。そうした態度は、相手の心に壁をつくる恐れがある。厄介なことにその壁は目に見えない。

 「本来、人と話をする際にそんな壁をつくる必要はないはず。特に記者さんのような仕事ではマイナスでしかないでしょう」。都染さんの指摘が耳に痛い。

 兵庫は多様な県だ。都染さんらが最近出版した「関西弁事典」(ひつじ書房)では、方言は播磨、但馬、丹波、淡路、摂津の旧五国に分けるのが一般的とされる。だがより細かな分類もあり、小さな違いにこだわれば七国や八国、いやもっと多く…などと想像する。

 「地元ではどう言いますか?」。その一言で心の壁はぐっと低くなることだろう。地名の話題で盛り上がれば、兵庫の奥深さを今以上に楽しむことができそうだ。

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