ひょうご「新聞感想文コンクール」

少しの勇気をもって

鈴鹿 寧々(すずか・ねね)
 武庫川女子大学付属高3年

視覚障害者の疑似体験をしたことがある。目を閉じているのか開けているのかも分からない暗闇の中、手探りで足を少しずつ進めた。一歩を進めるのにも恐怖を感じ、腰は引け、手掛かりとなるものが何かないか全ての神経を集中させた。それでも何の道しるべも見つけられずに途方に暮れたことがあった。街中で白い杖をついて歩く人は一般の歩行者とほとんど同じ速度で足を進めている。このことにただただ驚嘆した。新聞記事でコロナウイルスの影響を受けている視覚障害者の記事を見て彼らを取り巻く環境にショックを受けた。

記事には視覚障害者の大きな助けとなるガイドヘルパーとの密接を防ぐために外出機会が激減していることや、日常生活での深刻な問題があった。具体的には必要な買い物があって出かけても、店内に急遽(きょ)設置された消毒液の場所が分からないことや、接触を防ぐために使われている金銭授受のトレーがどこにあるのか分からないといったことだ。これらのことは私にとって衝撃だった。当たり前のように思っていたことが全ての人にとっての当たり前ではないことを改めて知ったからだ。

私に視覚障害者の疑似体験の機会を与えてくれたのは山の上美術館だ。この美術館の展示品は全て実際に手で触れることが出来る。ここで副館長から非常に興味深いお話を聞いた。

この美術館の展示品の一つに美しいカメオがある。風で揺れ動くカーテンの前に佇む女性の姿を施したカメオだ。一人の視覚障害者の少女がこの作品に触れたときこう言ったそうだ。「カーテンが風で動くのってこんな感じだったのね」と。彼女の日常生活において風で揺れ動くカーテンへ手を伸ばしても、そのカーテンは手に当たって押し戻されてしまう。今まで彼女は想像でしか思い描けなかった情景を、その場面を表現した作品に手で触れることでしっかりと頭の中で具現化したのだ。

コロナウイルスの影響で様々な弊害があった。高校入学当時から心待ちにしていた留学もなくなった。多くの人が生活で様々な影響を受けた。不便さを感じることは沢山あるが幸い日常生活において生きていく上で支障があるほどのものではない。しかし障害を持つ人にとってはそうではない。何らかの障害を持つ人たちにとっては、特に非常時において多くの情報が必要である。それらが不足している場合、大きな不安や困難が立ちはだかる。

記事の締めくくりには視覚障害者にとって密接や触ることは生活上不可欠であることを理解して欲しいとあった。彼らにとって不自由さを感じない生活のために、理解をすることと何をすべきか社会全体が深く考える必要がある。そして少し勇気が必要ではあるが助けを必要としている人がいれば、進んで声をかけ、手を差し伸べる社会になればと願っている。

(7月5日付の神戸新聞から)

神戸新聞社賞
部門 受賞者
学校名・学年
作品の題名
神戸新聞社賞 小学校
1・2年
津田 依吹
小林聖心女子学院小学校・1年
タンタンがかえる
小学校
3・4年
林田 尚洋
神戸市立伊川谷小学校・4年
ゆめをかなえるスパコン「富岳」
小学校
5・6年
神木 希
神戸市立櫨谷小学校・6年
認知症も怖くない
中学生 柳原 綾乃
賢明女子学院中学校・1年
ぬくもり
高校生 鈴鹿 寧々
武庫川女子大学付属高等学校・3年
少しの勇気をもって
兵庫県知事賞
部門 受賞者
学校名・学年
作品の題名
兵庫県知事賞 小学校
1・2年
橋本 雪
加古川市立野口小学校・2年
いりょうようガウンをつくったよ
小学校
3・4年
井野上 碧泉
甲南小学校・4年
これからを生きる私への宿題
小学校
5・6年
下前 佳子
神戸市立御影北小学校・6年
私に今、できること
中学生 川田 江梨花
関西学院中学部・2年
好きだからこそ強くなりたい
高校生 政廣 りお
愛徳学園高等学校・1年
尊重すべき権利は

学校賞

学校賞
学校賞
  • ・姫路市立豊富小中学校
  • ・多可町立加美中学校
  • ・兵庫県立伊川谷北高校

▽小学校1・2年

摺河学園賞
学校名・学年 受賞者 タイトル
摺河学園賞 神戸海星女子学院小学校1年 山川 晏奈 バチはあたる?
優秀賞・販売店会賞
優秀賞・
販売店会賞
神戸大学附属小学校2年 林 美羽 ニホンイヌワシとかんきょうほご
明石市立鳥羽小学校2年 谷崎 紘太 ロボット開はつで存在かん
入選
入選 小野市立小野小学校1年 川村 真凛 ことしのなつやすみ
神戸市立美賀多台小学校2年 久保 花道 いやなことばかりじゃなかったよ
神戸市立長坂小学校2年 西川 柊翔 地球にあふれるプラスチックごみ
神戸市立伊川谷小学校2年 北野 由宇 あか石のせんそうの話
神戸市立井吹東小学校2年 萩原 泰地 ゴミをへらすたいせつさ

▽小学校3・4年

摺河学園賞
学校名・学年 受賞者 タイトル
摺河学園賞 神戸海星女子学院小学校4年 永川 潤 くじらを食べる食文化
優秀賞・販売店会賞
優秀賞・
販売店会賞
西宮市立南甲子園小学校3年 大恵 朱実 私にできること
神戸市立櫨谷小学校4年 神木 栞 大好きおばあちゃん
入選
入選 小野市立下東条小学校3年 井上 壮介 「紫電改」の記事をきっかけに
太子町立斑鳩小学校3年 八木 翔太 大きなゆめに向かって
南あわじ市立榎列小学校3年 武田 愛莉 ラストメッセージを読んで
神戸市立西舞子小学校4年 樋口 歩実 レジ袋有料化の記事を読んで
神戸市立摩耶小学校4年 前田 花子 虐待か伝統か

▽小学校5・6年

摺河学園賞
学校名・学年 受賞者 タイトル
摺河学園賞 神戸市立乙木小学校6年 藤田 恵輔 伝えたい戦禍
優秀賞・販売店会賞
優秀賞・
販売店会賞
関西学院初等部6年 柳澤 俐玖 海を守る
姫路市立豊富小中学校6年 青田 穂花 私たちの責任
入選
入選 神戸市立長坂小学校6年 中郡 麻菜美 命をめぐる物語
神戸市立舞多聞小学校6年 茂上 結南 海・地球を守るために
愛徳学園小学校6年 萩本 佳子 これからも
小林聖心女子学院小学校6年 古川 輝 夏の甲子園
神戸市立桂木小学校6年 鈴鹿 准平 ありがとう ぼくらのタンタン

▽中学生

摺河学園賞
学校名・学年 受賞者 タイトル
摺河学園賞 兵庫県立大学附属中学校1年 佐原 小麦 私の時間の使い方
優秀賞・販売店会賞
優秀賞・
販売店会賞
神戸市立布引中学校2年 大石 なな葉 「伝える」で救える命
高砂市立松陽中学校2年 桑平 のどか 思い出いっぱいの園舎
入選
入選 賢明女子学院中学校1年 井上 潮音 わがまち
小林聖心女子学院中学校2年 山本 小百合 青い地球が赤くなる前に
小野市立小野南中学校2年 藤本 愛矢 被爆継承 私たちの責任
高砂市立松陽中学校2年 菅野 叶歩 人々の人生を変えてしまった被爆
多可町立八千代中学校3年 岸本 ひかり 平和な世界を目指して

▽高校生

摺河学園賞
学校名・学年 受賞者 タイトル
摺河学園賞 賢明女子学院高等学校2年 藤原 なつみ 正しい言葉の使い方
優秀賞・販売店会賞
優秀賞・
販売店会賞
報徳学園高等学校1年 片瀬 奏磨 それぞれのハバロフスク
兵庫県立神戸高等学校1年 仲田 和花 差別のない社会へ
入選
入選 兵庫県立神戸高等学校1年 北川 あい 見極める力
神戸山手女子高等学校2年 桑野 葵 小さな自分がまいた種
賢明女子学院高等学校3年 梅野 萌恵 心の傷を癒すということ
賢明女子学院高等学校3年 ペパー福井 アンナ 差別と連鎖
姫路女学院高等学校3年 桃井 乙葉 安楽死について

(敬称略)

学校参加校(62校)

▼小学校=28校

 神戸市=本山第一、本庄、御影北、神戸海星女子学院、宮川、愛徳学園、舞多聞、西舞子、長坂、伊川谷、乙木、美賀多台、枝吉、北山▼宝塚市=関西学院、小林聖心女子学院▼加古川市=野口北、東神吉▼高砂市=北浜▼三木市=広野▼小野市=小野▼多可町=八千代▼姫路市=豊富▼太子町=斑鳩▼たつの市=揖保、小宅▼豊岡市=日高▼洲本市=由良

▼中学校=17校

 神戸市=布引、愛徳学園▼西宮市=関西学院▼宝塚市=小林聖心▼明石市=高丘▼高砂市=松陽▼小野市=旭丘、小野南▼加東市=兵庫教育大学付属▼多可町=八千代、加美▼姫路市=賢明女子学院、飾磨中部、神南、香寺▼上郡町=兵庫県立大学付属▼洲本市=蒼開

▼高校=17校

 青陽東養護、神戸、神港橘、神戸山手女子、須磨翔風、愛徳学園、伊川谷北、伊川谷、鳴尾、武庫川女子大学付属、県立伊丹、明石南、多可、賢明女子学院、姫路女学院、日ノ本学園、津名

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