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バー「海峡亭」の開業から35年。バーテンダーを引退する八木四郎さん(左)と妻の勢子さん=明石市本町2
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バー「海峡亭」の開業から35年。バーテンダーを引退する八木四郎さん(左)と妻の勢子さん=明石市本町2

 明石・魚の棚商店街近くでバー「海峡亭」(兵庫県明石市本町2)を営む八木四郎さん(81)が、25日の営業を最後に引退する。脱サラして店を開いてから35年。穏やかな人柄がつくる気楽な雰囲気で、多くのファンに親しまれた。引退を知ったなじみの客らが連日訪れ、名残を惜しんでいる。(吉田敦史)

 八木さんは明石高、関西大法学部を出て神戸の酒造会社に入った。営業マンとして働き、取締役も務めたが、45歳で退職。それまでに築いた人脈を生かして1987年10月1日、魚の棚商店街を西へ出てすぐのビル2階にバーを開店した。

 大事にしたのは信頼感。コマーシャル先行ではやっているだけの酒は出さず、自身で味わって間違いのない品を棚に並べた。子どもの頃に見た明石の海をイメージして作ったカクテル「明石」も愛された。

 支払いはテーブルに金を置き、飲んだ分だけ引かれる「キャッシュオンデリバリー」。肩肘張らず、1人でもゆっくり飲める雰囲気づくりに努めた。「私も飲んべえだから、1人で好きな物を食べて飲むのが幸せ。たまに隣の人と話が合えば、それでいい」と語る。客の気分にぴったり合った酒を提供し、喜んでもらえるのが楽しみだった。

 常連客とソフトボールチームを組んで活動し、利き酒会も開いた。毎年恒例の酒蔵見学会では30人以上がバスに乗り、日帰りで滋賀や奈良、岡山へ出かけた。

     ◇

 そんな店の歴史に欠かせないのは四郎さんの妻、勢子さん(82)の存在だ。

 24歳で結婚し、「定年退職したら店でもやろう」と話していた夫はある日、突然会社を辞めてきた。戸惑いながら手伝い始めたものの、当初は客の前に出られずカーテンの奥に隠れて働いた。それでも客の会話に耳を傾けるうちに「どんな人やろ」と興味が湧き、徐々に話せるようになった。

 「お母さん」「奥さん」と慕われ、常連客が結婚や子どもの誕生を報告しに来てくれるのがうれしかった。親子3代にわたる客もいる。そして、他界した客も。

     ◇

 81歳ながら、しゃんとした立ち姿の四郎さん。シェーカーを振る所作も衰えを感じさせないが「自分で後始末ができるうちに」と、35年の節目での引退を決めた。「人とのつながり、付き合いが増えたことが財産です」。店は知り合いに譲り、バーとして続くという。海峡亭TEL078・917・7707

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