創業者の八木四郎さん（８１）が９月に引退した魚の棚商店街に近いバー海峡亭（兵庫県明石市本町２）。交流のあった林寛三さん（３７）が店を引き継いだ。「八木さんが３５年続けられた。自分が３５年、次の人が３０年続けて、１００年続く店にしたい」と意気込みを語る。（有冨晴貴）

　林さんは２２歳のとき、神戸でバーテンダーとして働き始めた。５年後、当時のマスターが体調を崩し店を切り盛りするように。２０１８年に独立し、モーリエ（明石市東仲ノ町）を持った。八木さんは、林さんが以前務めていたバーの常連だった。

　海峡亭を引き継ぐ話が持ち上がったのは７月。八木さんは「林さんは独立したバーテンダーとしては若かったから」と話す。驚いた林さんだが「いい店は残していかないといけない」と決意した。昼はモーリエ、夜は海峡亭で営業する。

　海峡亭のスタイルは、ほとんど変わらない。店の隅に備え付けられたピンク電話がレトロな雰囲気を醸し出す。会計も「キャッシュ・オン・デリバリー」方式を引き継いだ。客が卓上に紙幣を置き、注文ごとにバーテンダーが金額分を引き去るシステムだ。「まだ慣れなくて、お金の取り忘れを指摘されることもしばしばです」と林さん。

　モーリエから持ち込んだものもある。ウオッカに漬けたショウガをふんだんに使った「サラサカレー」もその一つ。オリジナルスタイルのジンバックも特徴的だ。ジンをジンジャーエールで割り、かんきつ類を添えるシンプルなカクテルだが、林さんはジンジャーのシロップとすりおろしショウガを加えており、わずかな辛みが味を引き締める。

　八木さんは「店が若返ったと思う。林さんのやり方で続けてもらえれば」と応援する。日曜、祝日定休。午後８～１１時。海峡亭ＴＥＬ０７８・９１７・７７０７