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完熟で摘み取られる清水いちご=明石市魚住町清水
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完熟で摘み取られる清水いちご=明石市魚住町清水
完熟で傷つきやすいイチゴを丁寧にパック詰めしていく=明石市魚住町清水
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完熟で傷つきやすいイチゴを丁寧にパック詰めしていく=明石市魚住町清水
清水いちごを育てる橋本竜介さん(左)=明石市魚住町清水
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清水いちごを育てる橋本竜介さん(左)=明石市魚住町清水
イチゴを育てるビニールハウス=明石市魚住町清水
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イチゴを育てるビニールハウス=明石市魚住町清水
来年の収穫に向けて育てているイチゴの苗=明石市魚住町清水
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来年の収穫に向けて育てているイチゴの苗=明石市魚住町清水

 人口増が続き、新しい住宅が次々と建設されている兵庫県明石市。各地で開発が進むが、西部では今も農業が盛んだ。中でも「清水いちご」は地域のブランド品として確立されている。12月前半、収穫の真っただ中を取材した。(有冨晴貴)

■収穫の真っただ中

 橋本農園(同市魚住町清水)では、約35アールの畑で年約2・5万株の清水いちごを栽培する。代表の橋本竜介さん(43)ら約10人で4種類を生産しており、12月上旬の現在は「おいCベリー」や、最も早く収穫できる「章姫」などを中心に出荷している。

 午前8時。従業員がビニールハウスに入る。ビニールは二重に張られ、室温は外より約4度高い。イチゴは本来、春に実を付けるので、温室でないと冬に収穫できない。同園では地面にうねを立てて苗を植える土耕栽培と1・5メートルほどの台の上で育てる高設栽培とを行い、高設栽培のハウスにはヒーターを入れている。

 この時期は2時間ほどかけて収穫するが、繁忙期には午前中いっぱいを費やすこともある。収穫したらパックに詰め、収穫量が少ないうちは地元洋菓子店やJA兵庫南の直営店に卸す。量が多くなるとパック詰めしたその場で売る。

 農園の電話が鳴った。橋本さんは「ごめんなさい、今年はまだなんです」と謝って電話を切った。直売が始まったかどうかの問い合わせだった。

 今年は9月になっても夜の気温が高く、イチゴが熟すのが例年より1週間弱遅くなったが、早ければ今月20日前後に直売を始められるという。

■入手困難のイチゴ

 清水いちごは、別名「幻のイチゴ」とも呼ばれる。そのほとんどが兵庫県内の洋菓子店で使われたり、直売所で販売されたりし、入手するのが困難なためだ。

 一般的に流通するイチゴは完熟前に収穫する「青ちぎり」がほとんどだ。輸送中に追熟させ、消費者が手に取る頃に赤くなるようタイミングを合わせる。

 清水いちごは、完熟を待ってから収穫する「赤ちぎり」として摘み取られる。完熟のイチゴは柔らかく輸送中に傷みやすい。このため長距離輸送ができず、県内の限られた地域でしか手に入らない。「色は摘み取った後も赤くなるが、甘さは摘み取りからほとんど変わらない。だから赤ちぎりにこだわる」と橋本さん。

■定番の先駆け

 ビニールハウス栽培の技術がなかった1960年ごろ、清水の農家らは、全国に先駆けてイチゴを冬に収穫する方法を編み出した。春前に実を付けそうなイチゴの苗を冷蔵庫で眠らせ、秋に出して植える。生育を早めるのではなく、大幅に遅らせることで冬に収穫できるようにしていた。

 しかし、現代ではイチゴ以外の作物も、ハウスで収穫時期を早める「促成栽培」が当たり前になった。

 クリスマスのショートケーキには、白くて甘いクリームと対照的に、赤くて甘酸っぱいイチゴが欠かせない。この定番も清水いちごが先駆けだ。今も「クリスマスケーキのパイオニア」とも評される。

■待っている人のため

 今年はコロナ禍に加え、物価高がイチゴ農家の経営を圧迫した。ハウスのビニールは毎年張り替えるが、2割値上げされた。肥料は倍近くになり、来年植えるための苗も高くなった。橋本さんは「商品の値段に反映させないと成り立たない」と漏らす。

 それでも「待ってくれている人がいる。買ってもらえる値段に抑えたい。多くの人に笑顔になってもらえたら」と意気込んでいる。

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