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明石玉を研究する鈴木琴那さん(右)と、最初期のものとみられる明石玉を見つけ出した竹中敏幸さん=明石市上ノ丸2、市立文化博物館
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明石玉を研究する鈴木琴那さん(右)と、最初期のものとみられる明石玉を見つけ出した竹中敏幸さん=明石市上ノ丸2、市立文化博物館
明石玉を割り、樹脂で覆ったもの。成分の分析に使用された
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明石玉を割り、樹脂で覆ったもの。成分の分析に使用された
新しく発見された明石玉。最初期の製法でつくられたものである可能性がある
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新しく発見された明石玉。最初期の製法でつくられたものである可能性がある

 かつて兵庫県明石市の名産だった模造サンゴ「明石玉」。江戸時代後期から髪飾りなどに使われた装飾品だが、詳しいことは長年分からなかった。しかし最近、科学的な見地からの研究が急速に進んでいる。きっかけは大学生が昨年執筆した卒業論文だった。(有冨晴貴)

 論文を書いたのは、現在東京学芸大学大学院で工芸や文化財を研究する鈴木琴那さん(23)。装飾品に興味を持ち卒論のテーマにした。宝石などを模した品を研究するようになり、明石玉に行き着いたという。

 模造サンゴとは、高価なサンゴの代わりに別の材料を似せて加工した装飾品。

 しかし、明石玉は現在製造されておらず、製法や生産時期などについては、先行研究が非常に少なかった。明石市立文化博物館によると、何をもって明石玉とするかの定義がないため、博物館などで展示するのが難しく、研究が進まない一因になっていたという。そこで鈴木さんは、明石玉の成分を分析することで、その特徴を明らかにすることを論文の目的とした。

 まず、官報などを基に起源を調査。江戸時代後期に明石付近で製造が始まり、最盛期は明治から大正にかけてだと分かった。最初期の製法は、鉛玉の周りに着色した卵白を固めて張り、さらに牛の爪を張ったものだった。その後セルロイド製、ガラス製、その他の練り物を使用したものなどが誕生。これらが全てひとくくりに「明石玉」と呼ばれていたと結論づけた。

 さらに明石市を訪問しギャラリー「明石玉庵」(大久保町八木)を運営する竹中敏幸さん(74)や、市民グループ「明石玉研究会」などから聞き取りをした。竹中さんからは明石玉の実物を譲り受け、分析した。

 19点のうち7点は玉を割って断面を分析。他はエックス線などを用いて主要な構成元素を明らかにした。結果、11点がケイ素、ナトリウム、鉛でできており、6点がケイ素、ナトリウムで構成されており、17点はソーダ鉛ガラス、またはソーダ石灰ガラスと判明。残り2点はカルシウムが主要元素で、炭酸カルシウムが主成分の卵殻などから作られた可能性が高いという。

 分析結果から鈴木さんは、調査したサンプルのなかに、初期に製造された鉛と卵白を使用したものはないと結論づけた。

 しかし、最近になって竹中さんが、初期に作られたとみられる明石玉を発見。竹中さんは「最初期に作られた明石玉はほとんど現存していないはずだし、見たこともない。本物なら、大発見だ」と期待を寄せる。

 この明石玉は現在、鈴木さんが東京に持ち帰り分析している。鈴木さんは「もしかしたら大きな発見かもしれないので、がんばって研究したい」と話している。

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