ＡＴＭでたまたま出会った高齢者に声をかけ、特殊詐欺被害を防いだとして明石署は２６日、飲食店スタッフの中村幸（さち）さん（４０）＝兵庫県明石市＝に署長感謝状を贈った。中村さんは「声をかけるのに勇気がいったけど、自分でも驚くほど冷静に対応できた」とほほ笑む。同署によると、来店客の特殊詐欺被害をコンビニ店員や銀行員らが防ぐケースはよくあるが、偶然居合わせた人が防ぐのは非常に珍しいという。（領五菜月）

　同署や中村さんによると、２月２８日午後、イオン明石ショッピングセンター（大久保町ゆりのき通３）で女性（６６）が携帯電話で通話しながらＡＴＭを操作していた。

　女性はさまざまな銀行のキャッシュカードをＡＴＭに広げ、困った様子。後ろに並んでいた中村さんはその様子に詐欺を疑い「大丈夫ですか？」と声をかけたという。女性は大丈夫だというので、「これ以上声をかけるのも迷惑かも」と思いそのまま見守っていたそう。

　しかし、長時間ＡＴＭを触っている女性が心配になり、利用を終えたときに再度声をかけて詳しく話を聞いた。すると女性は、「保険金の還付があると言われたけど、指示通り操作してもうまくいかない」と話した。

　そのとき、近くに掲示してあるポスターの「還付金、詐欺」の文字が中村さんの目に飛び込んできたという。やはり詐欺ではないかと思い、銀行に電話をして確かめるように促した。さらに女性が電話している間に同署に通報したという。

　同署によると、女性は１度入金してしまっていたが、振込先の口座が凍結されており被害はなかったという。

　中村さんは「被害を防げて本当に良かった」とにこやかに語った。