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鶴澤友吉会が主催する人形浄瑠璃の撮影風景。三味線の木田朱美さん(右端)が指導役を担う=南あわじ市賀集福井、南淡福井自治会館
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鶴澤友吉会が主催する人形浄瑠璃の撮影風景。三味線の木田朱美さん(右端)が指導役を担う=南あわじ市賀集福井、南淡福井自治会館

 スポットライトが当たる舞台の前に観衆の姿はない。静かな室内に、哀切な三味線の音色と情感を込めた語りが響き、老若男女が真剣に人形を操る。

 兵庫県南あわじ市を拠点にする淡路人形浄瑠璃の愛好者団体「鶴澤友吉会」が、動画サイトのユーチューブで昨年9月に始めた生配信の撮影現場だ。「世界のどこでだれが見てくれるか分からないからと、お年を召した皆さんもやる気が出て、以前にも増して化粧や身なりを気にするようになりました」。指導役の木田朱美さん(48)が、柔らかな表情で話す。

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 4回目となった今月7日の配信は、「空から見る伝統力」と銘打った。

 国指定重要無形民俗文化財と聞くといかめしいが、古くは農村の小屋などで上演され、人々が日々の暮らしの癒やしにした伝統芸能だ。その原点を踏まえ、秋の実りに感謝し、豊穣(ほうじょう)の神様に人形浄瑠璃をささげる演出を考えた。ドローンを使い、撮影会場の自治会館へ神様が飛んでくるイメージの動画を付けた。

 友吉会に加え、創立50年という地元の後継者育成団体「福井子供会人形浄瑠璃部」と、愛好家団体「淡路人形浄瑠璃青年研究会」のメンバーも参加した。南あわじ市出身の俳優で古典芸能に詳しい山口崇さんに司会役を頼んだ。木田さんは「目を引くため工夫し、興味を持つ人を増やしたい」と語る。

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 木田さんは地元で生まれ育ち、高校卒業後の1992年にプロ団体の淡路人形座へ入った。義太夫節三味線の人間国宝・故鶴澤友路さんに師事した経験もあり、「鶴澤友吉」の芸名で三味線の弾き手を務めた。昨年春からの新型コロナウイルス感染拡大で公演が縮小したことがきっかけで、実家の野菜栽培に専念する決心をし、座を辞めた。

 中学生や個人の愛好家と、三味線の稽古をする活動は維持した。コロナ禍で発表会が開かれなくなったため、動画投稿サイト上で芸を見せる場をつくることにした。稽古やネット配信を続ける中で、伝統芸能を守りたいとの思いが改めて強まった。

 自然の恵みや厳しさと向き合う土地で育まれた人形浄瑠璃に関わり続け、「自分にできるやり方で魅力を発信していきたい」という。(西竹唯太朗)

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