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先天的に脳にある下垂体がうまく形成されず、ホルモンの分泌が減少する脳の難病「下垂体機能低下症」になった患者から作った人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使い、同症のメカニズムを解明したと、神戸大の高橋裕(ゆたか)准教授らの研究グループが発表した。研究成果は日本時間の18日、米医学誌電子版に掲載された。治療法開発や創薬が期待され、先天的な要因以外でかかる下垂体機能低下症についても同様の研究を進めている。(篠原拓真)
下垂体は「ホルモンの司令塔」と呼ばれ、成長ホルモンなどの分泌を制御する。下垂体機能低下症になると、成長が止まったり、疲れやすくなったり、不妊や血圧低下などが現れたりする。生まれつき下垂体が正常に形成されていない「先天性下垂体形成不全」の患者のほとんどが発症する。これまでホルモンの補充で症状を抑えるしかなかった。
研究では、患者の血液からiPS細胞を作製。試験管内で分化させ、変化の過程や遺伝子などを解析。その結果、遺伝子変異によって、下垂体の隣にある視床下部から分泌されるタンパク質が欠乏すると、下垂体の形成に悪影響が出ることが判明した。
下垂体機能低下症は、先天的要因以外でも腫瘍などでも発症する。研究チームは、他の要因についても同様の方法で発症メカニズムの解明に取り組んでいる。高橋准教授は「この方法でより多くの原因を見つけ、治療法開発につなげたい」と話している。
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