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 緊急事態宣言が解除され、人々が日常の生活を少しずつ取り戻す一方で、過酷な現場に直面してきた看護師の、心身の不調が懸念されている。周囲にはき出せないまま、ストレスをため込んでいる人も少なくない。3月末に開設された兵庫県看護協会の「メンタル電話相談」を担当する近澤範子・元兵庫県立大学教授(精神看護学)に、この時期にこそ必要な本人の気付きや、周囲からの支援について寄稿してもらった。

   ◇    ◇

 新型コロナウイルス感染拡大は徐々に収束に向かい、兵庫県では緊急事態宣言は5月21日に解除された。生活・経済・文化面の深刻な打撃からの立て直しに取り組み、第2波、第3波に備えて予防に努めつつ、この苦難の体験からの学びを備えに生かすべく取り組む時期を迎えている。

 医療の面では、新型コロナウイルス感染による兵庫県内の入院患者はピーク時には367人であったが、6月8日午前0現在で5人(宿泊療養を含む)にまで減少した。この間、感染者受け入れ病院の医療従事者は過酷な日々を重ねて来た。特に医師と看護職は、感染防御の設備備品や医療器具、マスクや防護服などが不足する状況下、自らも感染の危険にさらされながら懸命に職務に取り組む姿が報じられ、多くの県民からさまざまな形で感謝のメッセージが届けられた。

 その一方で、感染者受け入れ病院の職員と分かるとタクシーの乗車を拒否されたとか、子供が学校でいじめられたとか、未知のウイルスに対する不安が拒絶や攻撃、排除といった行動になり、風評被害によって職員たちを苦しめる現象も各地で生じた。医師や看護職の中には同居家族への感染を恐れて病院から帰宅できず、ホテルに泊まって出勤した人々や、車中泊を続ける人もいた。

 さらに、受け入れ患者の増加や院内感染の発生に伴う関連部門の閉鎖、濃厚接触の可能性のある職員の自宅待機、病棟の再編や職員の派遣などにより、平常の勤務体制の下で培われてきた組織内の人間関係にさまざまなあつれきが生じた。緊急事態における、各人の極度のストレスとゆとりのなさ故に怒りや非難・攻撃、あるいは傷つきを体験した人も少なくなかったものと思われる。

 そんな状況のもと、病院内にメンタルサポート・チームを立ち上げてニーズに応じた個別面接やサポートグループを展開してきたケースもある。その意義は大きいものの数に限りがある中、兵庫県看護協会は看護職への「メンタル電話相談」を3月23日に立ち上げた。その際に担当の機会をいただいた私は、事態が収束に向かいつつある今、これまでの活動を通して思うところを記してみたい。

 医療現場の過酷なストレス状況下で心身ともにゆとりのない状態では、個人的にメンタル電話相談にアプローチをする気力もない場合が多い。また、組織内の現状での悩みや葛藤を外部の相談窓口に話すことへの内心の抵抗も強いものと思われる。さらに、周りの人もそれぞれゆとりのない状態であることから、職場内に相談できる相手がなく、家族や友人知人にも打ち明けられず一人で抱え込んでしまう場合が少なくない。

 状況が改善せず頑張り続ける日々、大変さを抱え込むことで心のエネルギーが消耗し、徐々にバーンアウト(燃え尽き症候群)の過程が進行する可能性が懸念される。感染の収束に伴い勤務体制や職場環境が落ち着きを取り戻しても、心身の不調により再適応できず、結果的に退職や離職せざるを得ない状況に陥ることが危惧される。

 燃え尽き症候群の進行過程を食い止める上では、まずは自身の体験や思いを語ることを通して抱え込んできた大変さを吐き出し、受け止めてもらう中で自身のストレス反応(いらいら・怒りっぽさ・心身の消耗・不眠・食欲不振・抑うつ気分など)に気づき、セルフケア(ぐっすり眠る・おいしく食べる・楽しい時間をもつなど)やストレスマネジメント(呼吸法などのリラクセーション・対処行動の見直しなど)に意識的に取り組むことが大切だ。

 職場環境が落ち着いてきた時期に、現場の看護職の一人一人に疲れを癒やし心身の健康を取り戻していただくことが大変重要だと思う。そのために『メンタル電話相談』も一つの窓口として利用していただきたい。

 電話相談では、ご本人のお話をしっかり聴き、その体験や心情を受け止めながら抱え込んできた思いを十分に吐露してもらうことを通して気持ちが少しでも軽くなり、現状を捉え直し今後に目を向ける過程に寄り添いたいと心がけている。

 その上で、ご本人のニーズと時間的余裕に応じて、セルフケアの大事さ、ストレスマネジメントに触れることもある。なお、話された内容はご本人の了解なしに他には提供しない。また、ご本人が希望する場合には匿名でも相談に応じるようにしている。

 先に述べたとおり、心身ともに非常に疲れて時間的にもゆとりのない状況では、自ら相談窓口にアプローチする行動を起こしにくいもの。それ故、身近な人が目に映る最近の言動(怒りっぽい・笑顔がない・食事量が少ないなど)への気づきと気遣い(しんどそうね、夜は眠れてる?お仕事大変では?など)を本人に伝えることは、当人が自身のストレス反応に目を向け、必要な支援を求める行動を起こす上でのきっかけづくりとして大切な意味をもつ。支援の必要な方に電話相談を利用してもらえるよう、身近なお心当たりの方にもこの記事をご紹介いただければ幸いです。

◇兵庫県看護協会「メンタル電話相談」月~金 10時~13時、19時~21時

 TEL080・1460・7485

 メール受付(24時間)COVID-mental@hna.or.jp

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