片頭痛への理解を深め働きやすい職場づくりを進めるため、製薬会社日本イーライリリー(神戸市)の従業員らが「ヘンズツウ部」を立ち上げた。ワークショップやカードゲームなどを通し、健康に関する従業員間の相互理解を促進。疾患を抱えても能力を発揮できる職場を目指し、部活動は社外にも広がっている。(中部 剛)
片頭痛は神経性の疾患で、30~40代の働き盛りに多い。同社のインターネット調査では片頭痛患者の約9割が痛みがあっても我慢して勤務を続け、約4割が痛みを上司や同僚に伝えないと回答している。
職場の空気を変えようと2019年10月にヘンズツウ部を発足。疾患の有無にかかわらず、さまざまな職域から集まり、現在102人が所属する。全社を対象にしたワークショップを開催したり、オンラインで話し合ったりし片頭痛に関する知識を深める活動を続けている。当事者が症状やそのつらさを伝えるほか、疾病のない上司から見た印象なども語られてきた。
このほか、片頭痛の発症時は暗い場所で休憩することが望ましいため、当事者が社内のお薦めポイントをまとめた「オフィス快適マップ」を作成し、専門医の助言を受けて片頭痛の人向けの「お薦めレシピ」も作った。
こうした活動の結果、社内からは「体調不良を上司や同僚に相談しやすくなった」「チームワークがアップした」などの声が上がっており、ヘンズツウ部発足当時の19年10月と3カ月後のアンケートを比べると、体調不良の際、「上司に相談する」の回答が47%から58%に上昇したという。
社内で広報を担当し、ヘンズツウ部の運営メンバーでもある山縣実句(みぐ)課長は「きっかけは片頭痛だが、どんな疾病であっても同じ。相互理解が進むことで働きやすくなり、労働生産性も向上する」と話す。
同社は、アシックスなどの近隣企業や医療従事者、神戸市とプロジェクトを立ち上げてカードゲームを提供。片頭痛だけでなく、他人からは見えにくい健康課題と向き合える職場のコミュニティーづくりに役立てる。
カードゲームは日本イーライリリーのホームページからダウンロードできる。