兵庫県知事選
6月15日告示 7月2日投開票
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 5月中旬の早朝、兵庫県尼崎市の阪急武庫之荘駅前には“合戦”前の緊迫感が漂っていた。色とりどりのジャンパーを着た複数の政党関係者が競うように、通勤客に政策ビラを差し出す。その数、4陣営。28日告示、6月4日投開票の同市議選の立候補予定者たちだ。

 同市議選では、現職8人を擁する公明党がさらに新人4人を公認。日本維新の会も現職4人に加え新人3人、元職1人を擁立するなど早くも激戦の様相で、前哨戦が日ごと熱を帯びる。

 だが各陣営の熱気とは裏腹に、ビラを受け取る人はまばらだ。「市議会が何をしているか知らないし、誰がやっても同じでしょ」と30代の男性会社員。足早にビラ配りの一群を素通りし、改札口へ滑り込んだ。

 同市議選は前回4年前、投票率が41・38%で過去最低を更新。翌年にあった同市長選も25・69%と低迷した。兵庫県知事選でも、県内41市町で最下位が続く。

 尼崎に限らず、県内の都市部は地方選の投票率下落に歯止めがかからず、県や市町の選挙管理委員会も打開策を見いだせない。さらに近年は、投票率が従来高かった中山間地域でも落ち込みが目立ち始めた。一体、何が起きているのか。

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 15日朝、兵庫県北部の香美町役場で町長浜上勇人(55)が出迎えの職員から花束を受け取った。4月末の町長選で元町長(77)との一騎打ちを制し、この日が2期目の初登庁となった。

 香住、村岡、美方の旧3町が合併し2005年に発足した香美町。合併前の各町長選の投票率は80%台後半から90%台で推移してきたが、合併後の09年に80%を割り込み、今回は70・69%まで落ち込んだ。同日選の予定だった町議選が無投票になった影響もあるが、約3割が投票を棄権した。

 「高齢化が進み、投票に行くのが困難な人が増えた」と町選挙管理委員会の担当者。一方で「昔は寝たきりのおじいちゃんを背負ってでも投票に連れて行った。選挙への意識そのものが下がっている」とする。

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 中山間地域の投票率低迷は高齢化だけが要因ではない。政治参加や選挙行動が専門の関西学院大教授の山田真裕(51)は、05年をピークに進んだ市町合併による「構造変化」を挙げる。

 合併で市町の面積が拡大し、住民にとって役所だけでなく議会も遠のいたとの指摘は多いが、それは物理的な距離にとどまらない。

 香美町の発足前、旧3町には計44人の町議がいたが現在は16人。豊岡市では旧6市町の計96人が、4分の1の24人に。丹波市では旧6町の計94人が、4分の1以下の20人に減った。

 「地域に根差した地方議員は、選挙時に投票を働き掛ける中核も担っている。それが合併で激減し、全国的に地方選挙の投票率低下を招いている」と山田。合併したのは主に、人口の少ない中山間地域の市町だった。その影響は、都道府県の知事選でも見て取れる。

 大都市を抱える人口500万人以上の9都道府県(東京、神奈川、埼玉、千葉、愛知、大阪、兵庫、北海道、福岡)の前回と前々回の平均投票率を比べると横ばいだったが、それ以外の府県の平均は3・51ポイントの減だった。

 「低投票率が政治家の質の悪化を生み、議会の形骸化と地域の衰退を加速させる」。地方自治ジャーナリスト相川俊英は警鐘を鳴らす。

 最も身近な住民代表である地方議員の消失が引き起こす「政治離れ」。一方で、政務活動費の不正受給などによる「政治不信」も相まって地方議会の定数削減は一層進む傾向にある。政治を巡る“負の両輪”が、投票率低下という「無関心」を生む構図を浮かび上がらせる。

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 「重要な法案とご理解いただいた結果だ」。23日午後、国会。犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する法案が衆院を通過し、法相の金田勝年が満足げに語った。世論調査では「政府の説明は十分と思わない」との回答が77・2%に上るが、与党は採決を強行し、来週にも参院で審議入りする。

 昨夏の参院選でも圧勝し「1強体制」を強固にした安倍政権だが、共謀罪について、公約に記していたのは「東京オリンピック・パラリンピックに向け(中略)テロ攻撃を予防する取組(とりく)みを促進しつつ、国内の組織・法制のあり方について研究・検討を不断に進め、『世界一安全な国、日本』を実現します」という抽象的な一文だけだった。

 参院選の投票率(選挙区)は54・70%で過去4番目の低さ。自民の得票率(同)は39・94%で、投票を棄権した人も含め、全有権者の5人に1人しか支持していない計算となる。

 15年の安保関連法に続き、今回の「共謀罪」法案、さらには改憲への動き。低投票率の中で手にした数の力で、公約に掲げない法案が次々と採決されていく。

 「選挙に行かない人は政治家から無視される。棄権することは『無視していい』と言っているに等しい」。投票棄権に対する山田の指摘は手厳しい。

 「無関心の代償」は国政選挙だけではなく、より投票率低下が著しい地方選挙にも当てはまる。=敬称略=(森本尚樹、若林幹夫)

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