兵庫県知事選
6月15日告示 7月2日投開票
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 「無料化に(予算を)つぎ込むより、出産、子育てを切れ目なく支援した方が財源を有効活用できる」

 2月中旬、神戸市の2017年度当初予算案の記者会見。市長久元喜造(63)は13年の市長選で公約に掲げた「中学3年までの医療費無料化」を見送り、不妊治療費助成や保育料引き下げなどを拡充する方針を強調した。事実上の公約撤回。その理由を問われた久元の回答は用意周到だった。

 モニターに映した資料を基に、3歳~小学3年まで1回800円、小学4年~中学3年まで2割負担だった通院負担金の上限を、就任後、段階的に引き下げ、一律1回400円にしたと説明。17年度には6億円を投じ所得制限もなくすが、無料化にはさらに毎年20億円の巨額な税金がかかることも明らかにした。

 中学まで通・入院無料を制度化した自治体は全国1741市区町村のうち、ほぼ半数の825市区町村(15年4月時点)。とりわけ兵庫県内の制度化率は高く、17年度、41市町中35市町に上る。

 市民に対して政策などの実行を約束する「公約」。守るべきものではないのか。

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 2013年の市長選で公約の目玉に据えた「中学3年までの医療費無料化」を見送った神戸市長久元喜造(63)に対し、市議会の一部は「明確な公約違反だ」と非難する。

 自治体間の無料化競争はここ10年ほどで激化。兵庫県内41市町では、07年度時点で中学までの入通院費を無料化した自治体はなかったが、17年度には35市町まで拡大する。そこに毎年、総額100億円を超す税金が投じられている。

 有識者らは医療費の膨張や安易な「コンビニ受診」の弊害を指摘する。これに対し県内で唯一、所得制限なしで高校まで入通院を無料化した小野市長の蓬萊務(71)は「市民の意識は高く、医療費は増えていない」と反論する。

 施策の狙いも変わってきた。当初は早期の受診・治療のためだったが、近年では人口減や少子高齢化に歯止めをかける、移住者呼び込みの“切り札”として制度化が進む。ただ、それも無料化の普及で、インパクトや効果が薄らぐ。

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 「間違っていたなら変えるのが当然。状況もどんどん変わる。時の情勢に照らし現在の主張が最善かどうかを批評すべき」。5月上旬、前大阪府知事橋下徹がツイッターに投稿した一文。話題は改憲案だったが、過去の政局も想起させた。

 旧民主党が政権を奪取した09年の衆院選。原動力となったのが、03年衆院選で登場した「マニフェスト」(政権公約)だった。各党がこぞって数値目標や財源、達成時期などを明記し一大ブームの様相を呈した。

 しかし、同党が掲げた月2万6千円の子ども手当や高速道路無料化などは政権交代後も実現せず、批判と幻滅を招いた。マニフェストという言葉も負のイメージを帯び、昨夏の参院選では民進党も封印。選挙公約で具体的な数値や時期を示さず、抽象的な目標にとどめる傾向が強まる。

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 「実現性」と「具体性」で揺れる公約の価値。県内で物議を醸した例がある。

 「課題意識と哲学が変わらなければ政策は変わっていい」。西宮市長今村岳司(44)の15年の会見での発言だ。今村は初当選した14年の市長選で、前市政が進めたアサヒビール西宮工場跡地の活用計画を「白紙撤回」すると主張。だが当選後、議会の反発などを受け、統合病院の候補地として外郭団体に購入させた。

 政策とは違う公約撤回もある。5月15日、三木市長薮本吉秀(58)が会見で「信を問う機会をいただきたい」と顔をしかめた。市幹部と利害関係者による飲食問題での虚偽説明を認め、辞職と出直し市長選への立候補を表明した。

 薮本は06年、5選を狙った現職の多選を批判して初当選。「2期8年で課題を解決し辞める」としたが、再選後にこの公約をあっさりと撤回した。

 出直し選で4選を目指すが、仮に当選しても、任期満了の来年1月に再び市長選を行う必要がある。二転三転する主張に、市民からは批判の声も上がる。

 「PDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルでの検証が重要」。03年の統一選で初めてローカルマニフェストを提唱した元三重県知事の北川正恭は公約実現の過程を重視し「達成できないこともあるが、なぜできなかったのか説明責任を果たさなければ」と指摘。「有権者が納得できれば再選できるが、できなければ厳しい結果が下される」とする。

 それには公約と現実の行政を見比べる有権者の「目」も試される。=敬称略=(斉藤正志)

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