兵庫県知事選
6月15日告示 7月2日投開票
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兵庫県公館にある戦後の歴代知事の彫像。(後ろから)岸田幸雄、阪本勝、金井元彦、坂井時忠、貝原俊民の各氏
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兵庫県公館にある戦後の歴代知事の彫像。(後ろから)岸田幸雄、阪本勝、金井元彦、坂井時忠、貝原俊民の各氏
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 「知事は2期8年を限度とすべし」。かつて兵庫県に、こう繰り返し説いた知事がいた。公選2人目の兵庫県知事で、作家の顔も併せ持ち「文人知事」と称された阪本勝(まさる)。初当選時から「決して3選せず」「それ以上長く在職すれば必ず弊害を生じる」と唱え、2期の満了間際に辞した。

 戦後最初の公選知事を務めた岸田幸雄もまた、3選を目指した選挙で阪本に敗れる形で図らずも、連続2期で県庁を去った。阪本の「多選」の戒めには、岸田の3選を阻止する狙いもあったとみられるが、不文律か呪縛のように、その後の県政に付きまとう。

 続く金井元彦は「3選立候補確実」と目されながら「兵庫で3選の例はない」と2期で引退。「阪本知事に倣いたい」と吐露した。

 転機は、金井を継いだ坂井時忠(ときただ)。2期で引退を考えたが、後を託そうとした副知事が急逝し3選立候補を決意、4選も果たした。以降は貝原俊民、現職の井戸敏三と4選が3代続く。6月15日告示、7月2日投開票の知事選では、井戸が県政史上初の5選に挑む。

 多選は是か非か。選挙戦を前に、歴史をひもときながら考察する。

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 公選2人目の兵庫県知事、阪本勝が唱えた「多選制限」論。退任後に執筆した随筆でも繰り返し、その持論を説いている。

 「三期以上知事の座を占めるということは、自己の価値を過信する」「施政は新鮮さと緊度を欠き、人事は停滞し…(後略)」。その後も現職知事が2期満了に近づくたびに論争の種となり、知事自身の判断にも影響した。

 2期の慣例を覆した坂井時忠も、その一人。県議会などに宛て3選立候補の決意を示した親書では、阪本の例に触れ「真剣に苦悩いたしました」とつづった。不文律の生みの親である阪本にとっても、それを守るのは容易ではなかった。後に著書で「三選をすすめる強い世論に負けかけた瞬間があった」と明かした。

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 「大変多くの立候補要請をいただいたので、その声に応えたい」。6期目で現役最多選の知事である茨城県の橋本昌(71)が4月、今秋の知事選への7選立候補を表明した。6期目には石川県の谷本正憲(72)もいる。くしくも2人とも兵庫県の井戸敏三(71)と同じ旧自治省出身だ。現職知事の在任期数で、阪本がくぎを刺した「3期以上」は半数超の25人に上る。しかしこの間、多選を巡る議論がなかったわけではない。

 盛り上がりを見せたのは約10年前。基礎自治体を中心に各地で、首長の多選自粛条例が制定された。きっかけは2006年に相次いだ汚職事件。福島、和歌山、宮崎県の現・前職の知事が逮捕され、首長への権力集中に不信感が高まった。

 もう一つは「改革派知事」の出現。地方分権を巡る主張や県政改革で名をはせた三重県の北川正恭、鳥取県の片山善博、宮城県の浅野史郎、岩手県の増田寛也らが多選を避け2、3期で辞めたことも後押しした。

 だが、そうした議論もいつしか下火に。人口減による地方の疲弊や政党の人材難、各党相乗りで現職候補を支える傾向などが選挙の「無風化」と有権者の無関心を招き、多選増加の一因になっているともされる。

 トップの多選は国政にも及ぶ。3月、自民党は総裁任期を連続2期6年から3期9年へ延長。党内にも世論にも目立った反発はなく、「1強」といわれる党総裁安倍晋三は史上最長の首相在任記録を見据える。

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 「地方の自立を求めて国に対峙(たいじ)していく」。3月、兵庫県議会で5選立候補を表明した井戸が力を込めた。地方分権の受け皿となる関西広域連合のトップとしても国に物申してきたが、安倍政権の腰は重く、東京一極集中が加速する。昨秋の連合長選挙では“禅譲”も示唆したが、引き受ける首長がおらず続投した。

 一方、井戸への知事選立候補の要請数は、前回4年前の64団体から77団体に増加。支援者が理由に挙げる「安定」「発言力」「存在感」といった要素は、安倍政権を支持する声とも重なる。そこに、今の社会の空気が見え隠れする。

 井戸と争う立候補予定者では、前加西市長の中川暢三(ちょうぞう)(61)が任期を3期までとする条例制定を主張。コラムニスト勝谷誠彦(かつや・まさひこ)(56)は「米大統領でも2期まで」と批判。共産党推薦で元兵庫労連議長の津川知久(ともひさ)(66)は「行革の名の下に福祉予算を削減した」などと多選よりも井戸県政の姿勢を問題視する。

 利点と欠点を併せ持つ多選。単純に利害を測れないからこそ、われわれの民主主義と深く関わっている。

     ◆

 兵庫県知事選が迫り、秋には神戸市長選など県内で14の首長・議会選が控える。シリーズ「潮流ひょうご」第2部は、選挙について考える上で欠かせない三つのテーマ「任期」「公約」「投票率」を取り上げる。=敬称略=(黒田勝俊)

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