兵庫県知事選
6月15日告示 7月2日投開票
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 兵庫県庁2号館4階。知事選の告示を10日後に控えた6月5日夕、定例会見に臨んだ知事井戸敏三(71)は口調に一段と力を込めた。

 「空振りも多いが(国と)綱引きをしていくことに意義があったと思っている」

 話題は安倍政権が2014年度に地方分権改革の一環として導入した「提案募集方式」への対応。国に移譲を求める事務・権限を自治体側が提案するもので、これまで農地転用許可や自治体による「地方版ハローワーク」などは実現したが、大半は関係省庁に「対応不可」とされてきた。

 兵庫県の提案件数は15、16年度とも全国最多で、17年度も空き家再生の規制緩和など21件を求める。井戸は「個別の事務・権限移譲というスタイルを取っている限り、(国と地方の)役割分担を変える移譲は進まない」と国に同方式の見直しを提言するとした。

 知事そして関西広域連合長を務める井戸自身も総務省(旧自治省)の官僚だった。手の内を知る古巣に変革を迫るが、分権への歩みは遅く、「地方創生」の掛け声に反し東京一極集中が加速する。

 国の仕組みを熟知する官僚出身知事は現在、井戸を含め全国で27人に上る。それはこの国を貫く大きな系譜でもある。

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 全国の現職知事の約6割を占める官僚出身者。省庁別では、兵庫県の井戸敏三(71)をはじめ、地方自治を所管する総務省(旧自治省)が最多の13人。経済産業省(旧通商産業省)7人▽財務省(旧大蔵省)3人▽農林水産省2人▽国土交通省(旧運輸省)1人▽外務省1人-と続く。井戸がトップの関西広域連合に限ると、構成府県の知事8人中6人が元官僚。連携団体の三重、福井県も同様だ。

 近畿大法学部教授の丹羽功(51)=政治過程論=によると、官僚出身知事が目立ち始めたのは1980年代から。60~70年代にかけ各地で公害問題などを背景に、共産党や旧社会党など革新勢力の首長が誕生。だが79年に東京都と大阪府で革新系の現職が引退・落選し、自治省出身知事に代わったのが分岐点となった。

 丹羽の調査では、79~94年に初当選した知事53人中、元官僚は25人。95年~2005年は48人中21人と、いずれも高い割合を示す。財政悪化を立て直すための行政手腕や中央とのパイプが求められたことに加え、「官僚のキャリア形成の到達点」という要素があるという。

 中央省庁の課長から府県に出向し、再び省庁に戻った後、府県の副知事へ。現職の退任に伴い、知事となる-。当然、選挙の洗礼を経なければならないが、これを可能にしたのが各政党の相乗り型選挙だ。官僚の中立性も有利に働いた。

 「競争が抑えられ、昇進の延長線上に知事ポストを連結することが可能になった」と丹羽。兵庫県もこうした流れに連なるが、一方で特殊要因もあるという。

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 兵庫県で戦後3人目の公選知事だった金井元彦と、続く坂井時忠は、旧内務省出身(旧自治省の前身)。その後の貝原俊民と井戸が旧自治省と、55年間、自治省出身の系譜が続き、いずれも副知事を経ている。

 官僚知事の典型といえるが、「この傾向は全国的には90年代半ばまで」と丹羽は分析する。79~94年と95年~2005年調査を比較すると、前半に比べ後半は旧自治省が減り、他省庁の官僚が増加。副知事経験者も約6分の1に減ったという。

 片や兵庫が“伝統”を保っている理由として「日本海から瀬戸内海まで広く、人口も神戸・阪神間や郡部でばらつきがある。目配りするのに、利害調整に長(た)けた官僚人材が受け継がれてきた」とみる。

 さらには「ライバルの不在」も挙げる。知事となる人材は、自治体を含む官僚▽国会・地方議員や市町長ら政治家▽文化人やタレント-に大別されるというが「官僚の最大のライバルは政治家、特に国会議員。知事の座を狙う者がいなかったのでは」と指摘する。

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 「官僚出身の流れをいつまで続けるのか」「5選は長すぎるのではないか」。井戸の立候補が不透明だった昨年、県議会の与党会派の一部にこんな声がくすぶった。多選への反発から、他の候補者を模索する動きもあったが、「今から勝てる候補は現職しかいない」との声も根強く、「熟慮中」と繰り返す井戸の判断を待つ流れとなった。

 3月下旬、井戸は会見で「バトンタッチできる人を育てていないのか、見つけられなかったのか。5選を目指すからには全力を尽くす」と表明。後継への考えを問われると「官僚→副知事→知事候補というやり方が4代続いているが、それだけでいいのか考える時代だとは思う」とした。

     ◆

 兵庫県知事選の告示が1週間後に迫る。シリーズ「潮流ひょうご」第3部は、半世紀以上継承される官僚知事の仕組み、そして震災から20年余の時を経て動きだしたプロジェクトなど、兵庫県の過去と現在、将来像を見渡す。=敬称略=(黒田勝俊)

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