兵庫県知事選
6月15日告示 7月2日投開票
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選挙カーに乗り込み、支援者からの呼び掛けに笑顔で応じる勝谷誠彦氏=神戸市内(撮影・大山伸一郎)
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選挙カーに乗り込み、支援者からの呼び掛けに笑顔で応じる勝谷誠彦氏=神戸市内(撮影・大山伸一郎)
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 兵庫県知事選の火ぶたが切られた15日朝、神戸・三宮で、無所属新人、勝谷誠彦(まさひこ)(56)の眼前を無所属現職井戸敏三(71)の選挙カーが通りかかった時だった。

 「知事閣下におかれましては長い間、お疲れさまでした。せいぜいお体を大切に」。勝谷は、歴代最多の5選を目指す井戸を皮肉り対抗心をむき出しにした。

 「同じ人が(4期も)知事をやっていたら、職員は忖度(そんたく)しまくり」「古井戸を井戸さらいする」…。日ごとに井戸への多選批判を強める勝谷だが、当初は全く違う態度を見せていた。

 4月の立候補表明会見では、テレビでの舌鋒(ぜっぽう)鋭い姿と打って変わって「(現職の)悪口は言いたくない。よくやってくださっている」と柔らかな物腰に終始。トレードマークのサングラスも透明の眼鏡に変え、ネット上でも話題となった。

 一転して、新人3人の中でも際立つ現職批判に、他陣営から「素顔が出たか」との声も漏れるが、勝谷が意に介する様子はない。

 「現職に失政はないが、有権者の多選への抵抗感は根強い」と勝谷後援会幹部の高橋茂(56)。奔放に見える言動の裏には陣営の計算があった。

【県民の声分析 緻密な戦術】

 兵庫県知事選に立候補した無所属新人の勝谷誠彦(まさひこ)(56)が、街頭演説を繰り広げているその時。神戸・三宮の選挙事務所3階では、後援会幹部の高橋茂(56)がパソコンと向き合っていた。ここが“司令塔”だ。

 毎日50通近く届く有権者らのメールや、勝谷に触れたツイッターの「つぶやき」などを高橋が朝から晩までチェックする。県内全域が対象の電話調査も、立候補表明の前から既に3回実施した。「支持が弱い地域、年代は」「○○党支持層の動向は」-。データから強みと弱みをあぶり出す。

 「それだけはやめてよ」

 告示前日の14日、高橋がくぎを刺したのは、勝谷が好んで着ていたイメージカラーの青いTシャツとジーンズだった。「他の候補と比べ若さをアピールしたいのに、みすぼらしく見える」

 忠告の訳は、30~40代女性からの支持の低さ。翌朝の出陣式には「恥ずかしい」とこぼしながらも、爽やかなポロシャツとズボンを着た勝谷の姿があった。

 「テレビでのふんぞり返った印象を変えたい」と陣営。立候補会見では普段のサングラスを丸みを帯びた眼鏡に変えたが、会員制交流サイト(SNS)で評判が悪いとみるや、ポスターでは細めのフレームにした。高橋は「ネットならではの『集合知』で勝谷の魅力を磨き上げる」とする。

    □  ■

 勝谷と高橋の出会いは2000年の長野県知事選。電子楽器メーカーの技術者だった高橋はネットを駆使して、互いに顔も知らぬ住民同士をまとめ上げ、後に兵庫8区(尼崎市)の衆院議員も務めた作家・田中康夫(61)を初当選に導いた。陣営には田中の知人の勝谷もいた。現在は政治家の情報発信を支援する会社を営む高橋の人脈も、今回の選挙に生かされている。

 5選を目指す現職井戸敏三(71)への多選批判が根強いとみた陣営は告示に合わせ、その“弱点”を狙ったポスターやビラを作った。「さすがに5期20年は長過(す)ぎるでしょ!」「知事が変われば兵庫が変わる!」のキャッチコピーが目を引く。

 手掛けたのは、高橋の盟友の選挙プランナー。嘉田由紀子・元滋賀県知事(67)や今村岳司・西宮市長(44)の初当選を後押しし、1月の大阪府四條畷市長選では、現職で最年少となる28歳の市長を誕生させた。

 「市民が目覚めればどんな力を持っているか、われわれは知っている」と勝谷。だが高橋には危機感もある。「長野の時のような熱がない」。当選確実と目された前副知事を田中が破った長野県知事選の際は、長野五輪を巡る使途不明金問題や、旧態依然とした県政に不満が渦巻いていた。

 勝谷陣営は追い風を起こそうと、支持層が近いとみた日本維新の会の関係者にも水面下で接触を試みたが、現職井戸の推薦も視野に入れていた維新側は告示直前に自主投票を決め、もくろみが外れた。

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 19日夜の選挙事務所。遊説を終えビールで喉を潤す勝谷に、高橋が「もっと夢を語ってほしい」と注文を付けた。最新の調査結果は陣営も驚くほどの伸びを示していたが、一方で有権者から「演説が多選批判ばかり」と苦言を呈するメールが相次いでいた。「組織戦の現職に肩を並べ、前に出るには」と高橋。刻々と変わる情勢をにらみ、勝利へのシナリオを練る。

     ◆

 15日に告示され、27年ぶりに4人が立候補した兵庫県知事選は中盤戦に入り、舌戦が激しさを増す。シリーズ「潮流ひょうご」第4部は、7月2日の投開票に向けた各陣営の動きや戦術、その思惑に迫る。=敬称略=(小林伸哉)

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