岸田文雄内閣の支持率下落が止まらない。報道各社の世論調査では軒並み20%台を記録するなど危険水域に達している。

 賃上げが物価上昇に追いつかない中、総額13・1兆円の2023年度補正予算が成立した。だが首相肝いりの減税を盛り込んだ経済対策は、選挙目当てと有権者に見透かされた。不祥事による政務三役の相次ぐ辞任が追い打ちをかけた。

 共同通信が11月初旬に行った世論調査で、内閣支持率は28・3%と過去最低を更新し、不支持率も56・7%と高止まりした。中でも経済対策の減税や給付金は62・5%が「評価しない」とした。その理由で4割を占めるのが「今後増税が予定されている」だった。

 一昨年、首相が自民党総裁選に立候補した時に強調したのは「岸田ノート」が象徴する「聞く力」だった。強硬姿勢で政策を進めたそれまでの安倍、菅両政権から政治の姿が変わると多くの国民が期待をかけた。

 首相は原点に返り、国民の声に真摯(しんし)に耳を傾けるべきだ。

 首相は減税を「税収増を適切に国民に還元する」「30年続いたデフレから脱却する千載一遇のチャンス」と説明する。しかし、防衛財源確保のための増税時期や少子化対策の財源があいまいな状態で、目先の減税が評価されると考えたなら世論を甘く見過ぎている。補正予算の財源の7割は国債発行で賄い、将来世代の負担をさらに重くする点も、国民は見逃していない。

 低支持率について岸田首相は「真意が国民に伝わっていない」と釈明するが、伝わるように言葉を尽くすのが仕事だ。財源が必要なら、痛みを伴う増税についても率直に語るべきではないか。

 政権不信は地方の選挙にも響いた。参院徳島・高知選挙区の補選で自民候補が敗れたほか、10月の宮城県議選でも自民公認の5人が落選し、立憲民主党は10人全員が当選した。政権の立て直しは必至である。

 米軍オスプレイ機墜落事故や自民党派閥の政治資金過少申告など、課題は山積する。指導力を発揮して解決の道を探り、国民への説明責任を果たして信頼を取り戻すことでしか支持率回復は見通せない。