政府はきのう、一般会計の総額が112兆717億円に達する2024年度予算案を閣議決定した。
新型コロナウイルス禍で日本社会が混迷に陥った20年度以降、毎年の予算はコロナ対策一色となった。政策効果を十分に見極めないまま給付金や補助金が相次いで設けられ、金額は膨らむ一方だった。
歳出構造を「平時」に戻す-。今年5月の「5類」への移行を踏まえ、岸田文雄首相はそう明言した。
確かに今回、総額は23年度当初予算に比べ2・3兆円減った。それでもコロナ禍直前に編成された20年度当初予算を約10兆円も上回る。
税収は過去最高の69・6兆円を見込むが、歳出は到底賄えず、34・9兆円の国債を新たに発行する。返済と利払いに充てる国債費は過去最大となる。借金頼みの膨張路線を脱する道筋は見えてこない。
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歳出の総額が減少するのは、予備費が1兆円と前年度を4兆円下回った影響が大きい。
予備費は自然災害など突発事項に対応するのが本来の目的だ。以前は当初予算段階で数千億円程度だったが、コロナ禍や物価高への対応などを理由に膨れ上がった。内閣の裁量で使途を決められるからといって、乱用すれば国会軽視を招く。在り方を徹底的に議論する必要がある。
首相が力点を置く少子化対策や防衛力強化、賃上げ関連などは上積みが顕著だ。しかし、どこまで精査されたのかは疑問が残る。
負担の議論は先送り
少子化対策を含む社会保障費は37・7兆円と2・3%増え、過去最大を更新した。こども家庭庁予算の増加や、来年10月からの児童手当の拡充などを盛り込んだほか、介護報酬なども引き上げる。
防衛費は過去最大の7・9兆円で16・6%の大幅増となる。国際情勢や安全保障環境の変化を理由に「27年度までに43兆円を投入する」とした政府方針に基づき、相手国の射程圏外から反撃する「スタンド・オフ防衛能力」の強化などに充てる。
看板政策の実行に注力した予算案を、首相は「歴史的な転換点の中、先送りできない課題に挑戦した」と強調する。しかし、国民の負担増を含む安定財源の確保に向けた議論からは目を背けたままだ。
少子化対策では、3年間に施策を集中する「加速化プラン」に年3・6兆円が必要で、企業や国民が負担する「支援金」を26年度から計1兆円を集める方針だが、政府は国民の負担額を具体的に示していない。
防衛力の大幅強化についても、政府、与党は安定財源として法人税や所得税などの増税で賄う方針を示したものの、実施時期を決められないでいる。国民の批判を避けるばかりでは、理解や納得は得られまい。
減税策も目に付く。首相が突如打ち出した所得税・住民税の定額減税に加え、企業向けには賃上げ促進や研究開発の優遇措置、交際費から除外される飲食費の基準見直しなどが税制大綱に盛り込まれた。
所得税などの減税を打ち出したとしても、後に大増税が控えているとすれば、国民にもたらす効果は限定的なものとなる。これでは財政を悪化させるだけではないか。
財政健全化に道筋を
これまで政府予算の膨張を許してきた要因の一つに、デフレ対策として日銀が続けてきた異次元金融緩和政策が指摘される。巨額の国債を低利率で発行しても、最終的には日銀が引き受けてきた。
しかし潮目は変わりつつある。コロナ禍の収束や国際情勢の変化で物価が上昇し、日銀が金融政策の修正を打ち出したからだ。賃上げ基調が定着すれば、さらなる修正に踏み込むとの見方も強まっている。
長期金利の上昇を受け、国債の利払い費は9・7兆円と2兆円以上増える。9兆円台となるのは01年度以来である。国債発行額の増加と相まって、金利上昇が続けば今後も利払い費が膨らみ、予算編成の自由度を圧迫する。
財源を国債に依存し、財政再建が一向に進まない状況をどう打開するのか。岸田政権の財政運営の方針が見えてこない。
内閣支持率の低下に加え、自民党派閥の裏金疑惑が表面化し、政権の存続すら危ぶまれる事態だ。負担の議論を先送りし、国債を増発し続け、将来世代へのつけを膨らませるばかりでは、政権離れはさらに進むだろう。厳しい現実を見据え、政府は財源確保の在り方に正面から挑み、財政健全化への道筋を具体的に示さねばならない。























