平成以降で最悪の36人が犠牲となった京都アニメーション放火殺人事件の裁判員裁判で、京都地裁は殺人罪などに問われた青葉真司被告(45)に求刑通り死刑を言い渡した。刑事責任能力が最大の争点になったが、「自身の意思」で犯行を選び、心神喪失でも心神耗弱の状態でもなかったと認定した。

 判決は、青葉被告が「闇の人物の意向」により京アニの小説コンクールで落選し、アイデアを盗用されたと主張したことについて、妄想性障害が影響したと指摘した。

 一方で、犯行直前に「良心の呵責(かしゃく)」があったとする供述や、周囲に怪しまれないように行動した点を挙げ、善悪の区別や犯行を思いとどまる能力はあったとした。客観的で妥当な判断といえる。

 公判は、経緯と動機▽責任能力▽量刑判断-の3段階に分け、計23回にわたって開かれた。裁判員の負担は大きかっただろうが、丁寧な審理につながった。今後も社会的影響が大きい事件で導入してもらいたい。

 今回は多くの遺族が被害者参加制度を利用して法廷に臨み、被告に直接質問した。反省や謝罪を得られるかどうかも焦点だった。

 青葉被告は終盤、遺族側の問いかけに「申し訳ございませんという言葉しか出てこない」「(被害者について)想像する感情を持てればという悔いが残る」と述べた。一方で、多くの犠牲者を出したことを「運がなかったのは否定できない」と投げやりな発言をした。

 被害者参加は司法制度改革の成果だが、被告の発言に傷つけられる関係者も存在する。公判の経緯を検証し、より被害者の納得を得られるよう工夫を重ねるべきだ。

 公判では、全身の94%にやけどを負って兵庫県災害医療センターに搬送され、総力を挙げた治療で奇跡的に生還した30代女性の意見陳述書が朗読された。女性は「生きようとする意志が強かった」(松山重成副センター長)というが、陳述書では、多くの同僚が亡くなる中で助かった罪悪感も吐露した。

 女性と同様、事件でほぼ全身にやけどを負い、献身的な治療で命を救われた青葉被告に、この女性の言葉は響いたのではないか。被告の救命を批判する声もあるが、法廷で裁きを受けさせる意味は重い。

 青葉被告は、事件後に受けた治療や介護に対して感謝を述べた。幼時から父親の虐待を受け、社会から孤立していった過程を、どこかで止められなかったのか。セーフティーネットの充実が再発防止の鍵を握る。

 市民や被害者が参加した裁判を、悲惨な事件を二度と起こさない教訓につなげなければならない。