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 公教育を支える教員のなり手不足が深刻だ。教育現場を疲弊させている長時間労働の抜本的な是正を急がねばならない。

 公立学校に勤める教員の処遇などを定めた教員給与特別措置法(給特法)の改正法が成立した。現在は残業代の代わりに基本給の4%を「教職調整額」として一律に支給しているが、2026年から毎年1%ずつ引き上げ、31年に10%にする。教職調整額の増額は1972年の給特法施行後初となる。

 給与面の見直しに踏み出した点は評価できる。しかし、「定額働かせ放題」とやゆされる仕組みは残される。小手先の改善策と言わざるを得ず、教職を目指す人が増えるかは疑わしい。

 必要なのは、教員を増やして現場に余裕と裁量を持たせることだ。授業内容を充実させ、児童生徒とじっくり向き合い成長を支える。そうした教職のやりがいや魅力を高める環境づくりこそが求められる。

 給特法改正を巡る国会審議では、働き方改革をさらに進めるべきだとの意見が相次ぎ、各地の教育委員会に業務量管理計画の策定と実施状況の公表を義務付けた。

 2029年度までに教員の時間外勤務を月平均30時間程度に減らすことを目標に、受け持つ授業時間数の削減や、26年度から公立中で35人学級を実現するための措置を講じること-などを法の付則に明記した。

 このほか、負担が重い学級担任に手当を加算し、若手のサポートや学校内外の調整などを担う新たな職位「主務教諭」を都道府県や政令市の判断で置けるとした。

 ここ数年、多くの学校が働き方改革の一環で行事や業務を見直してきた。文部科学省によると、月45時間の残業時間上限を超える教員は22年度に小学校64%、中学校77%だったのが、23年度には小学24%、中学42%に減った。とはいえ、長時間勤務の割合は依然高い。現場からは「学校の努力だけでこれ以上減らすのは難しい」との声が上がる。

 長時間労働の解消を教育委員会や各学校に任せるのではなく、国が業務削減の具体策を示し、実行できるよう支援するべきだ。部活動の民間委託や保護者対応の効率化なども鍵となろう。地域や保護者の理解を得ながら進めたい。

 学校で教える内容の精査も欠かせない。学習指導要領の改定のたびに学習内容が膨らみ、「終わらせるだけで精いっぱい」と話す教員は多い。中央教育審議会は26年度中に新しい指導要領を答申する見通しだ。全体の学習内容や授業数の削減も視野に入れ、子どもの多様性に柔軟に対応できる体制を築く必要がある。