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 中部電力浜岡原発3、4号機(静岡県御前崎市)の再稼働を巡り、原子力規制委員会の新規制基準適合性審査で、耐震設計の目安として想定する揺れ「基準地震動」について同社が意図的に過小評価した疑いが明らかになった。原子力土建部の社員数人が関与していたとみられる。極めて重大な不正行為である。

 規制委の山中伸介委員長は「安全に直接関わる審査データの捏造(ねつぞう)案件だ」と指摘し、地元静岡県の鈴木康友知事も「県民の信頼を損なう事案であり、大変遺憾」と述べた。厳しい非難を受けるのは当然だ。

 中部電は外部の弁護士からなる第三者委員会を設けた。社内の聞き取りでは、審査への影響や時間の制約などを考え、都合の良いデータを選んだという。なぜ通常あり得ない判断をしたのか。第三者委は原因と背景を徹底的に解明する必要がある。

 基準地震動は原発の敷地で想定される最も大きい揺れで、耐震設計が妥当かどうかを判断する重要項目の一つだ。中部電は、計算条件が異なる地震動の中で最も平均に近い波を「代表波」にするとし、最大加速度1200ガルなどと説明した。規制委も「おおむね了承」とした。

 ところが実際には、社内で代表波を意図的に選んでいたとみられる。東京電力福島第1原発の事故も地震と津波で起きた。想定を都合よく定めるなど事故の教訓を全く無視した行為であり、原発の安全性の根幹を揺るがすと言うほかない。

 とりわけ浜岡原発は、南海トラフ巨大地震の想定震源域に立地する点で他の原発とは異なる。今後30年以内に60~90%程度以上の確率で発生するとされ、危険度が高い。中部電は防潮堤を海抜22メートルから28メートルにかさ上げする方針を示すが、事故の原因は津波のみではない。揺れへの危機意識があまりにも低すぎる。

 深刻なのは、今回の疑いが規制委への外部通報で初めて露呈した点だ。中部電は昨年11月にも、浜岡原発の安全対策工事で正式な契約変更や精算手続きをしなかった不祥事が計20件発覚し、副社長らが引責辞任した。企業風土に問題の根があるのではないか。

 林欣吾社長は「原子力部門の解体的な再構築を視野に入れる」と述べたが、それでは済むまい。規制委は審査停止を続ける方針で一致した。委員の1人は「再開などできるわけがない」と断じた。中部電は、再稼働に取り組む資格の有無が問われていると自覚すべきだ。

 相次ぐ不正の発覚は、原発事業全体への国民の信頼を失墜させた。電力各社は中部電に限った不祥事と捉えず、業界全体に関わる深刻な問題として受け止めてもらいたい。