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 政府が米国産生鮮ジャガイモの輸入解禁に向けた手続きを進めている。世界有数のジャガイモ生産国である米国からの再三の要求によるものだが、病害虫の侵入リスクには根強い懸念の声がある。輸入の可否については科学的根拠などに基づいた慎重かつ厳格な判断を求めたい。

 2020年、第1次トランプ政権時に輸入全面解禁の正式要請が日本にあった。昨年の関税交渉でも言及され、先月には手続きのスピードアップを求められるなど圧力は増している。世界貿易機関(WTO)に加盟する日本は、他国から輸入解禁の要請があった場合、国際ルールに基づいて対応せねばならない。

 生産農家にとっては安価な輸入品が入ってくるのではないかという不安もあるが、何より心配されるのが防疫の問題だ。ジャガイモは病害虫に弱い。そのため、米国産生鮮ものの輸入はポテトチップス向け加工用のみにとどめている現状がある。

 もし全面解禁されれば、スーパーなどの店頭で購入した人が種芋に転用し、そこから病害虫が広がることもあり得る。一度まん延を許せば根絶は困難で、全国の生産者らが参加した先月のオンライン説明会でも、「侵入を完璧に防ぐのは難しい」などと疑問や不安の声が相次いだ。

 特に警戒される病害虫が「ジャガイモシロシストセンチュウ」。根に寄生すると栄養の吸収を妨げ、生育不良などの被害をもたらし、農家の経営に大打撃を与える。15年に北海道網走市で全国で初めて確認されたが、いまだに侵入経路を特定できていない。10年以上たった今も周辺の畑では栽培が禁止されている。

 国内でのジャガイモの年間生産量は200万トン台に上る。約8割のシェアを誇る北海道に続くのは、鹿児島や長崎、茨城などだ。兵庫県内でも数千トンがつくられている。自給率は約7割に上り、国民の食生活に欠かせないとして国が定めた「指定野菜」の一つになっている。

 政府の手続きはリスクのある病害虫の特定まで進み、3段階ある中の最終工程に入った。同時にこれからは防疫のあり方など米国との具体的な協議に入る。農林水産省は米国側の防疫措置が十分でないと判断されれば、解禁に至らないこともあると説明している。当然だろう。

 一方で、実際には数年はかかるとみられていた輸入解禁が、もっと早まるとの見方もある。市場開放を求めるトランプ政権のプレッシャーに押されて判断を急ぎ、産地をリスクにさらすようなことがあってはならない。高市政権が重視する食料安全保障の観点からも安定生産を守る必要がある。リスクの排除と冷静な交渉に全力を尽くしてほしい。