投稿コーナー「私も生きヘタ?」
「引きこもり」の経験のあるNPO法人スタッフ・渡辺聖史さんに聞きました
8月のテーマは「引きこもり」です。国の調査では、引きこもりの人(15~64歳)の推計は全国で約115万人。丹波篠山市の渡辺聖史さん(37)も中学1年から不登校になり、その後は引きこもりを経験したそうです。現在は相談員などを務める渡辺さんに、当時の思いを聞きました。
-きっかけは?
「子どもの頃から、人に話しかけたり、友だちをつくったりするのが苦手でした。中学1年の時、新しいクラスになじめず、学校に行きづらくなりました。いじめに対する漠然とした不安もあり、休み始めると、勉強においていかれ、さらに行きづらくなりました。高校には進学しましたが、また行かなくなり、退学して引きこもりになりました」
-どんな生活を?
「ほぼ家にいてアニメを見たり、ゲームをしたり。たまに買い物に行っていました。みんながやれていることが自分はやれていない。当たり前のことができてないと負い目を感じ、友人らに顔を見せられなくなりました」
「だんだんと感情がなくなっていきました。しんどさを感じたくないから、感情を全部なくすんです。カウンセリングを受けた時、『世界が灰色に見えます』と先生に言いました。希望がなく、常にしんどかった。物事に対して批判的な考えばかりになりました。消えてしまいたいとも思っていました」
-転機は?
「通信制高校に入り、自宅で勉強をしていましたが、やりたいこともなく、その後の進路が決まりません。20歳が近づき、引きこもりの当事者向け(スペース)の『居場所』に行ってみることにしました。初めの頃は緊張してしゃべることができず、隅っこにいて、自分用の飲み物を注ぐこともできませんでした。それでも定期的に通い、料理やトランプなどをして過ごしていました」
「何年かして、『居場所』の夏のイベントで海水浴に行った時のことです。素潜りをした時、楽しい感覚があふれてきたんです。『昔、こんなんやったな』って。抑えていた感情が出てきたように思いました。20代半ばまで、早朝の新聞配達と『居場所』に通う生活を続けました」
-現在は?
「『居場所』を運営するNPO法人のスタッフになり、引きこもりの相談員もしています。実感しているのは、家から出て、いろんな人と出会ったり、体験したりすることで、生まれる変化があるということです」(中島摩子)