投稿コーナー「私も生きヘタ?」
「かゆみ」について大学生の竹内悠人さんに聞きました
今月は「かゆみ」をテーマに、アトピー性皮膚炎の症状に悩まされてきた神戸大学4年、竹内悠人さん(22)に話を聞きました。どうしようもないほどのかゆみに襲われても周囲にはつらさが伝わりにくく、孤独感も味わったという竹内さん。今は同じ悩みがある仲間とともに、患者にやさしい衣類販売の事業化に挑戦しています。
-かゆみはいつから。
「覚えていませんが、物心がつく頃には常に全身がかゆくて激しくかきむしってしまい、シャツに血がにじむ状態でした。小児科でアトピー性皮膚炎と診断され、塗り薬を処方されていました。でも、どうしてもかゆみは収まりません。腕の内側や膝の裏など蒸れやすい部位が特にかゆくて。例えばお風呂で体が温まったときや汗をかいたときに、すごくかゆさが強くなります。ゲームに熱中しているときも無意識に体をかき、寝ていても勝手にかいて布団に血が染みつくことも。小学校時代は水泳を習ったんですが、水がしみて痛くて途中でやめました」
-我慢するのは難しいんですね。
「保冷剤で冷やすなどの工夫もしましたが、それで収まるわけではありません。家族からは『(体を)かかずに、たたいたらいいから』と注意されたこともあります。心配してくれているとは分かりながら、つらさが伝わらないもどかしさが募りました。以前に比べればかゆみが収まっていますが、症状は日によって違うんです。急に一部分がかゆくなるときもあれば、体の奥の方がかゆくて、かいても手が届いていないような感覚の日もあります」
-本当に大変そうです。
「周囲の目も気になりました。体をかく様子が不格好な気がして、特に中学時代はにきびもひどくなって荒れた肌を見られるのが嫌でした。家族や学校の先生など周囲は気にかけてくれたし、アトピーをからかわれた記憶はありませんが、自分では気になって仕方がありませんでした」
-大学進学後は。
「農学部で学びながら、起業に興味を持つようになりました。3年生のとき、ビジネスモデルの提案や事業化に取り組む大学内の『起業部』に入り、肌のトラブルを抱えた仲間が立ち上げたチーム『SkinNotes』(スキンノーツ)に参加。『アトピー性皮膚炎患者さんが明るく前向きに生きられる社会へ!』を目標にしたビジネスアイデアに取り組んでいます。現在は同じくアトピーのある2人と活動しており、抗菌効果が期待でき肌に優しい緑茶染めのシャツ販売の事業化が目標。研究を重ね、静岡の緑茶染めの専門家にも協力してもらっています。プランはビジネスコンテストで入賞し、これから試作品をアトピー患者に体験してもらい、実際の販売まで取り組みたいです」
-アトピーは今も?
「かゆみは続いています。でも、同じ悩みを持つ仲間の存在はとても大きい。症状の強さや悩みの経験はそれぞれに違いますが、我慢できないこのかゆみを、共感できる人がいることで心が安らぎます。今、アトピーで悩む子どもにも『一人じゃないよ』と伝えたい。スキンノーツでは、患者同士を結びつけるコミュニティーづくりにもつなげたいんです。大学卒業後もこの挑戦を続けます」(聞き手・岩崎昂志)