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日差しで輝くプールの氷
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日差しで輝くプールの氷

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 尼学の副園長、鈴木まやがある数字を指さした。「12・4%」

 全国の児童養護施設から大学に進んだ割合だ。8人に1人。平均の4分の1以下。鈴木がふと、智也の話を始めた。

 幼い頃、尼学に来た。家庭の困窮が原因だった。朗らかだけど、対人関係は少し苦手。不登校も経験した。ただ、高校入学時には決めていた。「大学に行く」

 友人も作らず机に向かった。知識を得る楽しさ、分かる喜び。教えてくれた人への感謝は憧れに、そして夢に変わった。高校教師だ。

 3年生。学力は合格水準に届いた。バイトにも励んだ。大学の授業料免除、給付型奨学金の支給も決まりかけた。あと一歩、だった。

 「奨学金の保証人にはなれない」。両親が言った。「そういう家だ。分かってほしい」。にべもなかった。

 両親は職を転々としていた。光熱費は滞納。借金返済のための借金を繰り返す。10年たっても状況は同じだった。「どうしても進学したいなら、自分で働き、金をためてからにしなさい」。やむなく就職を決めた。

 虐待や経済困窮。施設の子の多くは学習と縁のない家庭で育っており、おおむね学力が低い。進学した先輩が少なく、イメージと意欲が湧きにくい。障害を抱える子もいる。鈴木が言う。

 「でも1番は、やっぱりお金ですね」

 学費に家賃、生活費。高校卒業までに到底準備できない。貸与型の奨学金は結局、借金。支える制度もほぼない。何より、頼れる大人がいない。

 施設の18歳に進学の壁は高い。越えられても資金が続かない子が多い。

 そんな中、1人の若者と出会った。今まさに、道を拓(ひら)こうとしていた。(敬称略、子どもは仮名)

2018/2/26
 

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