食品の値上げやマンション価格の高騰に加えて、家賃もじわじわと上がり続けています。気軽に引っ越すことが難しくなった今、いわゆる「隣人ガチャ」で外れを引いてしまうと、その影響は想像以上に深刻です。
とくに、自分には関係がないはずなのに生活に影を落とすタイプのご近所トラブルは、逃げ場のないストレスになります。関西で暮らすAさん(30代・主婦)の近所では、家の外まで響く激しい夫婦喧嘩が繰り返され、地域全体を巻き込む騒ぎに発展することもありました。
■地元では「子育てには向かない街」として知られるエリア
Aさんが暮らしているのは2DKの賃貸物件です。夫婦ともに他府県出身で、夫の転勤に合わせての住まい探しだったため、まったく土地勘がない状態での物件選びに。「駅から近くて便利なのに家賃が安い」という点に魅力を感じて選んだそうです。
最寄駅までは商店街を抜ける便利な立地で、ターミナル駅までも1駅と交通の便も良好。それにもかかわらず、周辺よりも家賃相場が安かったことを、Aさん夫婦は最初は好意的に受け止めていました。しかしある日、夫が職場の同僚に言われたひと言が、エリアの背景を知るきっかけになります。
「え、〇〇駅の南側に住んでいるんですか?もうすぐお子さん生まれるんですよね? よくあんな治安の悪いエリアで子育てしようと思いましたね??」
実はその駅周辺には、昔から住宅地として敬遠されがちな施設も多く、単身者ならともかく、これから子育てを始める家庭には不向きとされるエリアだったのです。
その話を聞いて「たしかにそうかもしれない」とAさんが真っ先に思い浮かべたのが、近所のある一家の存在でした。
■道路に放置された子どもたち、家の中からは怒鳴り声
斜め向かいの集合住宅1階の住戸では、玄関ドアが開け放たれた状態が続いており、車通りの少ない裏道とはいえ、2歳くらいから中学生くらいまでの子どもたちが年齢もバラバラのまま、道路で遊んでいます。母親らしき女性の姿は外ではあまり見かけず、代わりに家の中から「うるさい!」「ちょっと!〇〇見ときなって言ってるでしょ!」といった怒鳴り声だけが響いてくる放置状態でした。
Aさんは心の中で、「もしうちの子が同級生になったら嫌だな」と感じていたといいます。
子どもの放置だけでなく、夫婦の怒鳴り合いも月に一度は聞こえてきます。「この金食い虫が!」「もとはといえばお前が買ってきた車だろうが!」といったセリフが、内容まではっきりわかるほどの大声で飛び交い、「なんだかすごい家族が住んでいるな」と最初は少し興味本位で見ていたそうです。ところがある日、警察が出動する騒ぎに発展します。
■あまりの騒ぎに警察出動
その日も「またいつもの夫婦喧嘩が始まった」と思っていたAさん。しばらくすると事態は急展開を迎え、ドアからは食器や雑誌、時計、文房具、おもちゃといった家財道具が次々に外へ投げ出され、泣き叫ぶ子どもたちの声も重なって、まさに修羅場のような光景に。さらには、顔を真っ赤にした奥さんが包丁を手にする様子を見かねた近所の誰かが通報したようで、10分ほどでパトカーが数台到着する騒動となりました。
深夜に近い時間帯だったこともあり、「このようなことが続くと、子どもの教育に悪影響かもしれない」と感じたAさん。
産婦人科で知り合った近所のママ友にこの話をすると、「あの家族、知ってるよ。小学校でもモンスターペアレントとして有名らしいし、そのとき通報した人を探して聞き回ってるって聞いた。ちょっと怖いよね」との反応が。Aさんは「絶対に関わらないようにしよう」と心に決めるとともに、引っ越しを真剣に考え始めたそうです。
(まいどなニュース特約・中瀬 えみ)