車のエアコンフィルターは、車外または車内からエアコンシステム内に、チリやホコリが侵入するのを防ぐ大切な役割があり、定期的に交換が必要な消耗品です。
そこで、現役の整備士がエアコンフィルターの交換時期や費用の目安、交換方法ついて解説します。
■エアコンフィルターの持つさまざまな機能
エアコンフィルターは主にフィルターとしての集塵機能を備えていますが、特に乗用車の場合、最近ではプラスαの機能を持ったものがほとんどです。
例として、以下のような機能があります。
・脱臭
・PM2.5や花粉の集塵
・抗アレルギー・抗ウイルス
・抗菌・防カビ
これらに加えて最近では「ビタミンC放出」を謳った製品も販売されています。
■車のエアコンフィルターは交換しないとどうなる?
車のエアコンフィルターを交換しないまま使い続けると、エアコンフィルターの持つ機能が徐々に弱まります。それにより、カビや臭いが発生したり目詰まりを起こしてエアコンの風が弱くなったりする問題があります。
そもそも汚れやホコリにまみれたフィルターを通してエアコンの風が出てきていると思うと、精神衛生上にもよくないですよね。
冷房使用時のエアコンシステム内は湿度が高く、カビが発生しやすい環境にあります。
普段、整備の仕事でエアコンフィルターを交換していると、エアコンフィルターにカビが付着していることが珍しくありません。
アレルギーや喘息を持った方にとっては、エアコンフィルターの持つ役割は非常に重要です。
また、さまざまな汚れやゴミが蓄積されると臭いの原因になります。
さらに、長期間交換せずに放置しているとフィルターが目詰まりを起こしてしまい、吹き出し口からの風量が本来の風量とよりも弱くなってしまうこともあります。
酷いものだと風の通り道であるフィルターが目詰まりにより抵抗になってしまい、エアコンの作動音が大きくなる(ゴー音)原因にもなります。
■車のエアコンフィルターを交換する時期の目安
エアコンフィルターの交換時期の目安は1年または走行距離で1万~1.5万kmです。いずれかの目安の早いタイミングで交換することが推奨されています。
この交換の目安は、使用過程における目に見える汚れだけではなく、脱臭能力の低下等も考慮して設定された期間です。
わたし自身も、愛車のエアコンフィルターは汚れの具合に関係なく、かならず1年ごとにエアコンフィルターの交換をしています。12ヶ月点検と車検のタイミングごとに交換すれば、タイミングを逃さずにおおむね1年ごとに交換でき、交換時期を管理しやすいのでおすすめです。
また、エアコンフィルターの汚れ方は使用環境などにより大きく異なりますが、内気導入よりも外気循環で使用するほうが汚れるのが早い傾向にあります。
■車のエアコンフィルターの交換にかかる費用の目安
車のエアコンフィルター交換にかかる費用は1000円~1万5000円ほどです。費用は整備工場に依頼するか自分で交換するか、車種によっても変わってきます。業者に依頼する場合でも、一般的には1万円以内で交換できるケースがほとんどです。
エアコンフィルターの交換について整備工場に依頼する場合と自分でやる場合とに分けて解説します。
▽ディーラーや整備工場に依頼する場合の交換費用
プロに依頼する場合には、エアコンフィルター代+交換工賃の合計金額になります。
部品代はおおむね2,000~8,000円です。交換工賃はおおむね1,000円~6,000円です。
軽自動車などで安いところだと合計3,000円ほど、高い車種だと合計15,000円以上かかるものもあります。
▽自分で交換する場合の費用
セルフで交換するときは1000円~8000円でエアコンフィルターのみを購入した金額で交換できます。
▽エアコンフィルターを交換する難易度と工賃は車種によって異なる
エアコンフィルター交換の難易度は、車によって大きく異なります。
素人でも工具を使わず数分で交換できるものもあれば、工具を使ってさまざまな部品を取り外したり、それに伴って車側の装備を元通り使えるように、再設定をしなければいけない車種もあります。そのため、工賃も車種によって大きく変わってきます。
また、エアコンフィルターは性能の違いや製造メーカーの違いによって、同じ車種用のものでも価格が大きく異なります。
■車のエアコンフィルターを自分で交換する方法
車のエアコンフィルターを自分で交換する手順を紹介します。
脱着に際して難易度が低く、DIYでも簡単に交換できる車種を想定して解説します。
▽グローブボックスを外す
簡単に交換できる車種は、助手席のグローブボックスを脱着すれば目の前にあるエアコンユニットにエアコンフィルターが装着されていることが多いです
エンジンを切ったIG-OFF状態でグローブボックスを取り外しましょう。無理に外すと破損させるおそれがあるので、事前に車種にあった脱着方法を調べておきます。
▽エアコンフィルターを取り外す
エアコンフィルターが装着されている場所には蓋があるので、蓋を取り外します。蓋はツメで嵌合しているもの、ビスやクリップで固定されているものがあります。無理に引っ張って取ろうとせずに、取り付け状態をよく観察しましょう。
蓋が外れたら中にあるエアコンフィルターを引き抜いて取り外します。中にはフィルターが蓋と一体になったものもあります。
▽エアコンフィルターを交換して元に戻す
エアコンフィルターを交換します。ほとんどのフィルターは取り付けの向きが指定されているので、向きに注意して取り付けます。
不安な方はエアコンフィルターを取り外すときに、いま装着されている向きを確認しておきましょう。
エアコンフィルターを取り付けるときは、エアコンユニット内部でフィルターが折れ曲がったりしないように注意を払います。
万が一、変形した状態でエアコンフィルターを組んでしまうと、本来エアコンフィルターで集塵できるものが集塵できず、エアコンユニット内部に入り込んでしまいます。その結果、不具合の発生や異音の原因となることもあります。
(例:ブロワファンモーター内に落ち葉が入り込んでしまい、エアコンをつけるとファンの回転に応じてチリチリ音がする…など)
エアコンフィルターの交換が終わったら、蓋をつけてグローブボックスを取り付けて元に戻せば交換完了です。
▽【補足】さまざまなエアコンフィルター交換の方法
上記で解説した方法とは異なるエアコンフィルター交換方法の車も多くあります。
エアコンフィルターの場所が異なるだけで、脱着する部品が変わってきますが、中には運転席側からアクセスが必要なものや、車の外から交換するものもあります。
エアコンフィルターそのものも横向きについているものもあれば、縦向きについているものがあり、中にはエアコンフィルターが二分割になっているものもあります。
ご自身の車のエアコンフィルターはどこについているのか、DIYで交換可能なものか工具が必要なのか等を、事前に確認しておきましょう。
■エアコンフィルターを交換しても臭いがある場合は?
エアコンフィルターを交換しても、エアコンの臭いが気になる場合に次にどうしたら良いか解説します。
▽臭いの原因を特定する
エアコンフィルターを交換しても臭いが気になる場合、臭いの原因が他にある可能性が高いです。
・タバコ臭
→エアコンシステム内部、シートやフロアマットに臭いが染み付いている可能性が高い
・ペットの臭い
→タバコ臭と同じくエアコンシステム内部、シートやフロアマットに臭いが染み付いている可能性が高い
・カビ臭い
→エアコンシステム内部、特にエバポレーター周辺にカビの発生が考えられる。酸っぱい臭いがするようなケースもある
・オイルの臭いまたは甘い臭い
→エンジンルーム内でオイル漏れや、冷却水漏れ(甘い臭いの原因)のトラブルが発生している可能性がある。外気導入にしていると特に臭いを感じやすい(※この場合、該当箇所の修理が必須です)
▽除菌・消臭を試してみる
臭いの特定ができたら、臭いの質や場所に応じた方法で除菌・消臭を実施します。
カー用品店やホームセンターなどでも販売されているスチームタイプの除菌・消臭剤が、作業性が良くておすすめです。
車内に置いてエアコンを内気循環で作動させながら、スチームを発生させるのでエアコンシステム内部と、シートやフロアマットなどもまとめて除菌・消臭できることがメリットです。
また、除菌・消臭剤の中にはエアコンシステム内部のエバポレーターと呼ばれる、ニオイの原因になりやすい部品を直接洗浄するものもあります。
DIYでこれらにチャレンジしてみるのも良いでしょう。
それでも臭いに悩まされ、自分でどうにもできないときは、整備工場や洗車専門ショップなど車のメンテナンスのプロに相談することをおすすめします。
▽芳香剤や空気清浄機を使うのもひとつの方法
様々な方法を試しても、染み付いた臭いが思うように取れないことがあります。一時的に良くなったように感じても、しばらく経てば元通り…ということも。
そんなときは、自分好みの芳香剤で臭いをごまかすのもひとつのやり方です。
また、車載用の空気清浄機を活用している人もいます。気になる方は試してみてください。
■整備士のまとめ
エアコンフィルターの交換を疎かにしていると、エアコンシステム内部におけるカビ・雑菌の繁殖を促すことになります。
自分は大丈夫でも、アレルギーや喘息を持った同乗者に影響を与えることも考えられます。
DIYで簡単に交換できる車種であれば交換にかかる費用も安く抑えられ、コスト面での負担もそこまで大きくありません。
快適なカーライフに欠かせないエアコンを気持ち良く使い続けるためにも、エアコンフィルターは定期的に交換しましょう。
(まいどなニュース/norico)

























