ちゃんとしなければと思えば思うほど自分を追い詰め、周りと自分を比べて焦ってしまうものです。就職活動では、そんな気持ちに押しつぶされそうになる人も少なくありません。作者・流石兄者さんがX(旧Twitter)に投稿した漫画『ちゃんとしたおとなになれない』は、就職活動に失敗し続ける主人公の孤独や葛藤を描き、大きな反響を集めています。
主人公・味美はニートの引きこもりとなって7年目です。しかしそんな日々に終止符を打つべく、ついに面接の日の朝がやってきました。ですが、なぜか家中にまとめられた荷物が並んでおり、家全体にどこか落ち着かない雰囲気が漂っています。
味美の母は家の様子の変化について、「大掃除をしている」と淡々と理由を話すだけでした。近くにいるのに遠く感じる母から「たまにはおいしいものを食べてきて」とお金を渡されます。母の励ましを受け、味美は今度こそ「ちゃんとした大人になるぞー!」と自分を鼓舞するのです。
その後、味美は不安に押しつぶされそうになりながらも、何とか電車で面接会場へ向かいます。しかし、面接会場では他の候補者が積極的に質問をしている姿に圧倒され、自分だけが浮いているような気持ちになってしまうのでした。面接の順番が近づくにつれて、味美はトイレに逃げ込みついには面接を放棄してしまいます。
面接を放棄した味美は「また、ちゃんとした大人になれなかった」と嘆きながら帰宅します。そこで味美を待っていたのは、もぬけの殻になった家と両親からの置き手紙です。今朝、母がしていた“大掃除”は、両親が家を出るための準備だったのです。
親にも見捨てられてしまった味美は、その夜、半額になったお弁当を食べながら涙するのでした。
読者からは胸をえぐられる展開に「リアルで泣ける」「ハッピーエンドになってほしい」といったコメントがあがっています。そこで同作の作者である流石兄者さんに話を聞きました。
■みんなちゃんとしてなくてもいいよ!
ー作品を描くきっかけは?
Vtuberの叶識しゃふさんとの出会いです。彼女は発達障害があるのですが、イジメられたことや人に騙されたことも、病気のこともあっけらかんと話します。その姿に衝撃を受けました。
僕も彼女と同じ障害を持っていて、学校でも就活でも数えきれないほどの挫折を経験しました。今でこそ定職に就けましたが、自分の過去は“恥”だと思い込み、人に話せずにいたのです。ですが、彼女に背中を押され、主人公・味美を通して自分の過去を語ってみようと思えました。
ー味美ちゃんにどんな言葉をかけたいですか?
世の中は驚くほどちゃんとしてない人ばっかりだから気にすんな。
ーたくさんの反響がありました。印象に残ったことは?
「身に覚えがある」という感想をくれた人がけっこういたことです。 自分と同じ思いを持っている人に届いたことがうれしかったです。
ー同作の続編は?
まだ実際に描くかは未定ですが、味美がホームレスとなり、女の子ばかりのホームレス仲間と生活していくという続編の構想はあります。
ー読者へメッセージをお願いします。
読んでくれて本当にありがとう! みんなちゃんとしてなくてもいいよ! ちゃんとしてない人間としてテキトーに生きて行けばいいのさ。実際続きを描くかは未定だけど、味美のホームレス編を描いたらぜひ読んでね。
<戸塚ネオさん関連情報>
▽X(旧Twitter)
https://x.com/sasuganaorera
▽pixiv
https://www.pixiv.net/users/42608862
▽ジャンプルーキー
https://rookie.shonenjump.com/series/OmisFlIDwTU
(海川 まこと/漫画収集家)

























