プロコーチの中山さんとの対話(吉本ユータヌキさん提供)
プロコーチの中山さんとの対話(吉本ユータヌキさん提供)

誰かと自分を比べて落ち込んでしまう...そんな経験は、多くの人が持っているのではないでしょうか。つい「自分は何をしているんだろう」と心がざわついてしまうものです。そんな気持ちが、コーチングを通して前向きに変わっていく過程を描いた漫画『他人と比較するのやめたい』(作・吉本ユータヌキさん)が、SNSで話題を呼んでいます。

物語は、吉本さんが不安げにSNSを見つめる場面から始まります。タイムラインには漫画家仲間の投稿が並び、他人の成功を目にした吉本さんは、焦りや劣等感から「自分、ダメやな」と落ち込んでしまいます。

実は吉本さんは現在、「コーチング」を受けていました。コーチングとは、対話を通じて本人の力や答えを引き出す手法で、知識を教える「ティーチング」とは異なり、先導や強制をせず「気づき」を促すことが特徴です。同作は、吉本さんがプロコーチ・中山さんとのやりとりを描いています。

中山さんは吉本さんに「吉本さんはどうなりたいんですか?」と優しく問いかけます。吉本さんが「他人と比べて落ち込みたくないです」と答えると、中山さんはさらに「他人と比べてダメだと落ち込む自分がそこにいたらなんて声をかけます?」尋ねました。すると吉本さんは悩んで、言葉に詰まってしまいます。

そこで中山さんは、吉本さんの近くにある消しゴムに落ち込む自分を描き、そこに声をかけてみたらどうかというユニークな提案をします。その提案に吉本さんは困惑するも、実際に描いてみると「これなら声かけやすい」と納得。

さっそく吉本さんは消しゴムにさまざまな声掛けをおこないます。「じっくり計画的に勧める性格やし焦らなくてもいいんじゃない?」や「焦る気持ちはわかるけど競争してるわけじゃないよ」など、自分の素直な気持ちを消しゴムに投げかけます。すると吉本さんは、自分が消しゴムに投げかけた言葉こそが、自分の本心だったことに気づくのでした。

後日、再びSNSを見つめる吉本さん。しかし以前と違って彼らの言葉に落ち込むことはなく、重版が決まった漫画家仲間にお祝いの投稿をします。かつては比較して落ち込んでいた相手に、素直に喜びを伝えられるようになったのです。

最後のシーンでは、「よーし!一歩前進!」と自分のキャラクターを描いた消しゴムを机に置き、「この消しゴム、今年中に使い切るぞ!」と宣言し、物語は明るく締めくくられています。

同作は吉本さんの最新刊『「漫画家やめたい」と追い込まれた心が雑談で救われていく1年間』に収録されています。そんな同作や著書について、作者の吉本ユータヌキさんに話を聞きました。

■「他人に頼れない人」にぜひ読んでもらいたい

ー「自分に集中すること」は現在も意識的にされていますか。

ずっと意識してます!疲れていたり、焦りがある時は、SNSをみて、他人に嫉妬したり、ストレスを感じたりしてしまうんですが、その度SNSから距離を取って、自分に集中するぞ~と言い聞かせたりしています。

ー著書『漫画家やめたい~』をまとめる際に気にかけたことなどあれば是非教えてください。

絶対にウソを書かない。よく思われようとしない。ということを気にかけました。最初の方は、綺麗にまとめようとしたり、嫌われないようにってことばかり意識してしまい、上っ面のいいことばかり書いてしまっていたので、全部書き直したりしました。

ーどのような人に著書『漫画家やめたい~』を読んでもらいたいですか。

「他人に頼れない人」にぜひ読んでもらいたいです。ぼくがそうだったので。

雑談って、全部が全部、悩みを解決させるものではないと思っています。モヤモヤが大きくなることもあれば、違うモヤモヤに気づいてしまうこともあって、楽になるだけではないんですけど、ぼくの場合は「いざとなれば自分には話せる人がいる」ってことが日々心強くいれるものになりました。

なので、極論本を読まなくても、この記事を見て「頼ってみようかな」と思ってもらえたら、それでうれしいです(読んでもらえるともっとうれしいですが)。

ー読者へメッセージをお願いします。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました!
比較しちゃいますよね。ぼくもいまだに辞められずにいます。けど、「あ、比較してる」って気づいて抜け出せるようになりました。

 “辞める”ことがゴールではなく、”気づく”ことをゴールにすると、気楽になると思うので、ぜひ試してみてください。

(海川 まこと/漫画収集家)