5年前に離婚した会社員のAさん(40代)は、小学6年生の娘と2人で暮らしています。Aさんは父親として試行錯誤しながらも、娘を懸命に育ててきました。ところがある日、思春期に差しかかった娘から「お母さんと一緒に暮らしたい」と告げられます。親権は自分にあるものの、娘の気持ちをどう受け止めればいいのか、突然の言葉にAさんは戸惑いを隠せないのでした。
このように、成長とともに「別の親と暮らしたい」と希望するケースは少なくありません。では、子どもの意思はどの程度尊重されるのでしょうか。Authense法律事務所の弁護士川崎賢介さんに話を聞きました。
■親権者変更は、子どもの利益のため必要がある場合に認められる
ー離婚後に父親と暮らしている子どもが、母親と暮らしたいと希望した場合、法的に変更は可能でしょうか?
親権者の下で子どもを監護する必要があるため、家庭裁判所の手続きによって母親への親権者変更をすることになります。親権者の変更は「子どもの利益のために必要がある場合」に限って認められます。
判断にあたっては、父母それぞれの監護の意欲や経済状況、子どもへの愛情の程度などのほか、子どもの年齢・発達状況・環境の変化への適応力・本人の意向などが考慮されます。
子どもの希望は尊重されますが、それだけで親権者変更が決まるわけではなく、こうした事情を総合的に見て判断されます。
ー子どもの意思は、何歳くらいからどの程度尊重されるのでしょうか?
明確な基準はありませんが、親権者を決める際は子どもの年齢や発達の程度に応じて、その意思を考慮する必要があります。 特に15歳以上の子どもの場合は、家庭裁判所が本人の意見を直接聴くことが義務付けられています。
本件のように小学6年生程度であれば、意向は参考にされます。しかし、年齢及び発達が十分であるとはいいがたいため、これだけで直ちに母親へ親権者変更とはなりません。
ー親権者と監護権者が異なる形でも離婚は可能でしょうか?
親権者と監護権者を別々にすることは、法律上は可能です。ただし、離婚後も父母の対立が続くと子どもが争いに巻き込まれるおそれがあるため、実際に認められるケースは極めて少ないのが現状です。
親権とは、養育者としての子どもの身上や財産に関する権利義務を指します。一方、監護権とは、実際に子どもを養育・世話する権限を指します。両者を分ける「分属」は民法766条および819条で認められていますが、あくまで子どもの利益(福祉)にかなうかどうかによって判断されます。
また、分属した場合には、監護権者と子どもの氏(名字)が異なることで、扶養手当や健康保険などで不利益が生じることもあります。
ー親権や監護権をめぐる場面で、親としてまず大切にすべきことは何でしょうか?
子どもにとっては、父母との情緒的なつながりが何より大切です。たとえ親権者や監護者でなくても、もう一方の親と関わり続けられるよう配慮することが望まれます。
◆川崎賢介(かわさき・けんすけ)弁護士/Authense法律事務所
証券会社での組織内弁護士経験を持ち、企業法務を中心に離婚やネット誹謗中傷など幅広く対応。粘り強く課題に向き合い、依頼者一人ひとりに誠実に寄り添う姿勢を大切にしている。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)
























