たとえ自分に実績がなくても、積み重ねた年齢と経験から的確なアドバイスができることがあります。コケ山さんがX(旧Twitter)に投稿した『就活行進曲』 では、作者がとあるきっかけから面接練習に付き合ったことをきっかけに、自身の就活時代を重ね合わせたアドバイスを披露する様子が描かれています。
ある日、作者は以前に家庭教師をしていた生徒・山口くんから「就職活動がうまくいかない」と相談を受けます。面接練習の相手をしてほしいと頼まれますが、実は自身も学生時代は就活で連敗続きでした。作者は「自分がアドバイスなんてできるのか」と不安を抱きながらも、熱心に頼み込まれたため引き受けることにします。
その後、実際に練習を始めてみると、山口くんは作者からの質問に答えているものの、どこかぎこちなく会話がかみ合いません。そこで作者は「じゃあ一度、面接じゃなくて普通に話してみよう」と提案すると、驚くほど自然に言葉が出てくる山口くんの姿がありました。
それを見た作者は山口くんに「そんなにPRしなくてもいい」と伝えます。それは「自分だったらたくさんアピールする人よりも、素直に会話ができる人と一緒に働きたい」と作者が感じたからです。その言葉は、実は作者自身がかつてアシスタントをしていた先生の教えでもありました。山口くんはそのアドバイスに納得し、「これからは力を抜いて、普通に話すようにします」と前向きな表情を見せます。
そしてしばらく経ったある日、山口くんから就職が決まったとの連絡が届きました。喜びながら話を聞いていると、就職先はなんと、作者がかつて作品を持ち込みに行き、厳しい評価を受けた出版社だったのです。これを聞いた作者は「おめでとう」と思う気持ちと「あの出版社か…」という少し複雑な思いが入り混じり、なんとも言えない心境になったのです。
そんな同作について、作者のコケ山さんに詳しく話を聞きました。
■就活を振り返って「失敗するべくして失敗した」
ーこちらのエピソードを漫画にしようと思ったきっかけを教えていただけますでしょうか?
漫画教室で「懐かしい光景」を描くという課題がありまして、そのときにふと思い出したエピソードだったので描きました。
ーご自身の就活時代、今振り返ると「あの時こうすればよかった」と思うことはありますか?
うーん…今振り返るとあの時は社会なんてよくわかってなかったし、無我夢中だったので、どうあがいても自分は変な方向にいってただろうなあ~と、思いますね。失敗するべくして失敗した感じもあったので、あの時こうすればよかったというのが正直思いつきません(笑)
強いて言うなら、あわよくばすごい自分のことをよく見てくれてて、就活がスーパー得意な人がいい感じにエスコートしてくれてたら最高だったのになぁという他力本願な気持ちくらいですかね(笑)
ー就職先が持ち込みに行っていた出版社だと分かった時の率直な気持ちを教えてください。
シンプルに「すげーな」というおめでとうの気持ちと、「あわよくばコネで仕事にありつけないかな」という邪な気持ちがちょうど半々ぐらいでしたね(笑)
(海川 まこと/漫画収集家)
























