初公開された戦没学生の顔写真。一人一人の表情が迫ってくる=神戸大学百年記念館
初公開された戦没学生の顔写真。一人一人の表情が迫ってくる=神戸大学百年記念館

 丸刈りに詰め襟姿で正面を見据える青年たち。かしこまりつつも、穏やかな表情が並ぶ。太平洋戦争で学徒出陣し、志半ばで命を落とした60人余りの顔写真だ。神戸大学百年記念館(神戸市灘区六甲台町)の特別展「戦場に行った神戸大学の学生たち」で初めて公開されている。(合田純奈)

 神戸大学に残る記録では、前身の旧制神戸商業大学、神戸経済大学に1942年10月~45年4月に入学した910人のうち762人が学徒出陣し、少なくとも67人が戦没した。展示パネルには、顔写真に氏名や年齢、「フィリピン」「硫黄島」「沖縄本島」などの亡くなった場所が添えられている。

 特別展を主催した大学文書史料室によると、倉庫の整理作業で、入学時に提出された彼らの写真が見つかったという。一人一人、死亡報告と照らし合わせ、入学時期で分けて顔写真を並べた高さ2・6メートル、幅5・1メートルのパネルを制作した。ところどころ情報が抜け落ちており、写真がない学生も6人いる。

 大学文書史料室の野邑理栄子室長補佐(53)は「67という数字だけでは分からない、訴えかけるものが顔写真にはある」と趣旨を説明する。うずもれていた資料を公開した理由は、それだけではない。「戦場から戻ってこられなかった学生たちへ、顔写真を展示することで『おかえり』の気持ちを伝えたかった」

 会場には、戦死した学生が家族に宛てた手紙などの資料約70点も並ぶ。出征する学生のために学友らが贈った日章旗には「要領で生きて帰って来い」という本音とも取れる寄せ書きが残る。

 顔写真のパネルを見つめていた経営学部3年生の男子学生(22)は「学徒出陣について、知識として知っていたが、表情を見ているうちに怖くなってきた。同い年で戦死した人もいて、時代が違えば自分だったかもしれない」と話した。

 12月5日まで。無料。日曜休館。午前9時半~午後5時(土曜は午前10時~午後4時)。神戸大大学文書史料室TEL078・803・5035